大阪市住之江区、地下鉄四つ橋線と南港ポートタウンが接続するところに、「住之江公園」なる駅がある。今回は、その住之江公園駅直結の施設、オスカードリームに関する話だ。
このオスカードリームという施設、大阪市交通局が持っていた土地をうまく使おうということ、もともと車庫だったところを開発し、223億円もの費用をかけて作られた施設なのだが、まあとんでもないところでした。
ということで今回は、この「オスカードリーム」について、その歴史的背景と現状について探っていこう。
失敗した大阪市交通局の目論み
オスカードリームは、大阪市交通局との関係の中で建設された。
「土地神話」が語られ、土地価格が日を追うごとに上がっていった1980年代、大阪市交通局はどうにかして自身の持つ土地を活かせないものかと苦悩していた。次々と地下鉄路線を建設し、その膨大な償還費を抱えていた彼らにとって、土地をうまく活用し、利益を増やしていくことは最も重要な課題であったからだ。しかし、彼らはあくまで交通局。公営事業者である彼らにとって、交通事業に関係のない行動を起こすには途方もない手間がかかる。どうすれば良いのだろう。彼らは考えた。そして、ある結論にだどりついた。
土地を貸してビルを建てさせて、その利益を配当金として受け取れば良くね??
そう。彼らが取ったのは、土地を銀行に信託し、信託銀行にビルを建てさせ、その利益の一部を「配当金」という形で受け取るという方法だった。これにより、大阪市側はオープンから30年の間に261億円という多額の配当金が支払われる予定だった。
しかし、その目論みはうまくいかなかった。オスカードリームが完成した1995年には、既にバブルは崩壊、それと同時に「土地神話」も崩壊し、多額の建設費とは真逆に賃料の大幅低下につながってしまったのだ。結果、大阪市には一度たりとも配当が支払われないどころか、逆に土地を信託されたみずほ信託銀行から赤字建て替え分275億円と遅延損害金を請求される始末。結果、大阪市がみずほ信託銀行に283億円を支払う形で今に至る。
なお、現在オスカードリームを保有しているのは「キンキエステート」なる企業で、大阪市がオスカードリームの一般競争入札を行った2014年、約13億円で落札されたそうだ。誰も得しないとんだ話である。
もともとはバスターミナル、今は・・・
さて、歴史的経緯を話してきたところで、オスカードリームの中へと入っていこう。
先ほど、オスカードリームは住之江公園駅直結の施設だと書いたが、実際にはニュートラムの住之江公園駅のみに直結しており、地下鉄四つ橋線の住之江公園駅から行くには駅との連絡ブリッジと接続する2階まで行くか、一度地上に出なければならない。なお、上にも書いてあるが、四つ橋線から行くには5号出口を利用するのが最も早い。
入口に着いたはいいのだが、いったいここは本当に商業施設なのか?と疑いたくなってしまう。ダイソー、スポーツクラブルネサンス、ホテルあたりは良いとして、「玉出年金事務所」って・・・。さすが生活保護率の高い街・大阪と言いたくなる光景だ。いくら元・公共施設とはいえ、わざわざ施設名のとなりに書くほど重要か??
入口にある看板を見て大丈夫か?と思ったが、どうやらそれなりにお店は入っているようだ。ただチェーン店は少なめで、再開発ビルのような様相を見せている。かつては激安ベビー用品店・西松屋や最強イタリアン・サイゼリヤなんかもあったようだが、現在はそれらも撤退してしまった。土地柄、この辺にはよく合う店だと思うんですが。隣にドン・キホーテがあるような場所だし。
それにしても実に見にくいフロアガイドだな、これ。1Fと2Fは横に見るのに、それ以外の階は縦に見る。かと思いきや、右下に「オフィスゾーン」と称した別のフロアガイドがあったりと、とにかくわかりにくい。もう少しどうにかなりませんかね、これ・・・。
内部だが、これに関しては非常にキレイで、1995年という開業年の割には最近できたショッピングモールと遜色ないほど整備されていた。ただ、規模の割にお店が少ないからか、それとも客の数が少ないからなのか、はたまたイルミネーションがスゴすぎるのか、非常にガラーンとしている印象を受けた。こんなところにイルミネーションしてもカップルは来ないと思いますよ、運営者の皆様。
先ほど、「どうやらそれなりにお店は入っているようだ」と書いたが、どうやらそれも1階だけのようだ。これは3階の様子だが、どうやら上層階のテナントは埋まっていない。そしてそれをオフィスに無理やり改装して埋める、という状況。西松屋すら撤退するような場所だもん、そりゃそうよね。住之江区ともなるとこうなるのもしょうがないか、と妙に納得してしまう。
現在オスカードリームに残る唯一の飲食店、ロッテリアも11:30時点でこの状況。ランチタイムでこれですよ。アイドルタイムではないですからね。そりゃみんな逃げ出すよ・・・。
もともと大阪市交通局のバスターミナルを活用して建てられたオスカードリームだが、バスターミナルとしての機能は今も継続している。建物の裏に行けばバスの車庫が見られるし、
オスカードリームの1階に行けば市バスのターミナルが設置してある。建物が別会社に引き渡されても、どうやらこの機能自体は継続しているらしい。
そして驚いたことに、住之江公園駅前からは多くの路線があるようで、大阪の中心地・なんばに行く系統や、住之江公園駅から谷町線の喜連瓜破駅までを結ぶ、いわゆる「地下鉄敷津長吉線」計画予定のルートを通る路線も運行されている。それに加え、土日祝日および学校が休みになる期間限定だが、ユニバーサルスタジオジャパンへ行くバスも運行されているようだ(現在は運休中)。施設はスカスカだが、バスターミナルは満員御礼ということか。元々バスターミナルだったところだとはいえ、格差を感じる瞬間だ。
まとめ 交通面での強みを生かせるか
オスカードリーム。その現状は、大阪市の負の遺産だ。この負の遺産を再生させ、「稼げる」場所に生まれ変わるためには、いったいどうすれば良いのだろうか。
これには、様々な方策が考えられる。しかし、どんな方法を試すにしても、まずは交通面でのアドバンテージを考慮に入れるほかはないだろう。
地下鉄住之江公園駅は地下鉄四つ橋線・ニュートラムの始発駅となっており、大阪最大の繁華街である梅田までは20分ほど、難波であればわずか10分ほどでアクセスすることができる。しかも、始発駅であることから確実に座っていける。これは大きなメリットだろう。それに加え、住之江バスターミナルからは各所へ行けるバス路線が発着しており、広域から人が集まる場所であることに間違いない。
このメリットを存分に生かし、これからどう発展していくのか。オスカードリームの未来が楽しみでもあり、不安でもある。
下の本、「マルコに恋して」はKindle Unlimitedを使うことで無料で読めます。良ければどうぞ。