これまで当取材班は、大正区内に所在する様々なアーケード商店街を片っ端から取り上げてきた。具体例としては「平尾本通商店街(サンクス平尾)」「泉尾商店街」「三泉商店街」といった場所が挙げられる(それぞれのレポートについては商店街名をクリックすると参照できるので、良ければぜひご覧ください)。しかし大正区って実に面白いものですね。他の区に比べて鉄道網があまり発達していないのもあってか、他の区と比べてガラパゴス的な成長を遂げている気がしてならない。まるでどっかの日本みたいですね。
さて、今回やってきたのは先ほど訪問した三泉商店街に隣接した「三軒家中央商店街(さんげんやちゅうおうしょうてんがい)」になるわけですが・・・ 上の写真にあるボロボロの看板を見ても分かる通り、この三軒家中央商店街には残念ながら非常に悲しい風景が広がっていた。今回は、そんな三軒家中央商店街の現状について、写真を交えてお伝えしよう。
大正駅に近いはずなのに・・・ 「三軒家中央商店街」
(赤色が三泉商店街、青色が三軒家中央商店街)
上の地図を見てもらえれば分かるかと思うが、三軒家中央商店街は三泉商店街と隣接したエリアにある。JR大正駅にも近く、駅前という訳ではないものの駅から歩いて3,4分と、そこそこ便利な場所に所在している。アーケードの距離に関しては約150mほどと他の商店街に比べると短いが、比較的距離のある三泉商店街や泉尾商店街と近接していることもあってか、短さを感じさせない構成だ。
しかし、先ほど挙げた写真を見れば分かる通り、その現状が良くないことは明らかだ。アーケードは朽ち果て、入口にある「三軒家中央商店街」の文字は錆び付き、もはやアーケードが存在しているだけでも奇跡と言っても過言ではない状況を晒し出している。関東ならとっくのとうに解体されても同じくないこの状況だが、ここ、三軒家中央商店街では令和の時代になった今もその姿を留め続けている。もうこれ一種の遺産モノでっせ。JR西日本がJR東日本と比べて同じ列車を長く使い続けることは有名だが、それと同じ状況がこんなところにも表れている。
なお、この商店街の由来となった「三軒家」という地名だが、かつて民家が三軒建ったことからこの地名がついたとのこと。日本地名大辞典によると「江戸時代の初期頃には遊女町ありき」という記載があり、かつては遊郭に近い状態を見せていたのかもしれないが、今はそんなこともなく、大阪の下町らしいのんびりした風景が広がっている。
商店街の中へと入っていこう。アーケードこそ設けられているものの、営業しているお店はごくごく僅かで、駅近ということもあって人通りこそ多少はあるものの、雰囲気が暗いことやお店のシャッターが灰色になってしまっていることもあいまって寂しい風景を映し出してしまっている。ポジティブな言い方をすれば「古き良き風景の名残」とでも言えるのかもしれないが、正直「陰鬱」という言葉のほうが似合っている気がしてならない。でもここは「古き良き風景の名残」と言っておきましょう。そうしないと地元の方々に失礼な気がします。
商店街の東側に至ってはもはや商店街をつくる商店が取り壊され、そこに住宅が建てられたのか、商店街というより「アーケードのある住宅街」という少々奇妙な光景が広がっていた。神戸市のサンロードクニカや二宮商店街で見たことのある風景だが、まさかこんなところにもあるとは。実際シャッターが灰色になるほど老朽化している街だし、何か被害が起きるよりはこうなるほうが賢いのかもね。
しかし、こんな商店街にもちょこちょこお店が残っているようで、シャッターばかりが並ぶ中、元気に営業を続けていた。こんな状況下ではあるが、本当に頑張っていただきたいと願うばかりだ。
こちらのお店は「トキワ書店」のほうのみ営業中で、隣の「トキワ〇〇」さんは廃業済み。今となっては何が記載されているのか不明だが、見た感じおそらく「トキワ薬局」が入居いていたのかと思われる。
しかしそれにしても、恐ろしいほど寂しい商店街だな・・・。 ちょこちょこ自転車や歩行者が通るものの、彼らはここに用事はなう一瞬で商店街の中を通り抜けてしまう。そしてその後に残るのはガラーンとした寂しい風景のみ。失礼だが、ここまで来てしまうと笑ってしまうぞ・・・。
そんな商店街の一角・樽井商店さんの軒先には、
「ゴミの不法投棄は犯罪 監視中 商店会」
の文字。性善説の通じない、残念な世の中になってしまいましたね・・・。
駅から近いほど衰退が激しいという珍しい風景
さて、ここまで「泉尾商店街」「三泉商店街」そして今回の「三軒家中央商店街」という、大阪・大正区の中で最も商店街の集まるエリアを見てきた。
(緑色が泉尾商店街、赤色が三泉商店街、青色が三軒家中央商店街)
こちらの3つの商店街を見ていると、実に面白い特徴があることが判明した。なんと、駅から離れれば離れるほど商店街が繁栄しているというのである。以下の3つの写真を見て頂きたい。
これらの商店街、上から「泉尾商店街」「三泉商店街」「三軒家中央商店街」となっている。なっている、なっているのだが、これらの写真と上のGoogleマップを見てもらえれば分かる通り、駅から遠い順に賑わっている。実に不思議な状況だが、なぜこんなことになったのだろうか、気になって仕方がない。「駅近」という言葉がもてはやされている今の世の中だが、この光景がどう変わっていくのか、楽しみだ。