子育て世代からの支持の熱さで有名な兵庫県明石市。今回はそんな明石市の中心駅・JR/山陽明石駅エリアへとやってきた。
JRと山陽電車の並ぶ明石駅。スピードのJR・充実した1日乗車券の山陽という構図が強いこの両社だが、やはりJRの圧倒的なスピードには勝てないのか、ラッシュ時になると山陽電車からJRへと客の大移動が起こるというなかなか香ばしい風景も見られるらしい。ちなみに取材班は貧乏なので山陽電車の1日券で移動しました(笑)
そんなJR明石駅の東側・仲ノ町と呼ばれる地区にはJR明石駅周辺で初めての大規模再開発事業を行ったエリアが存在し、駅南側の再開発が完了した現在も多くの人を集めている。今回は、そんな明石駅東側の再開発によって出現した大規模商業施設「アスピア明石」について、その様子を見ていくとする。
明石駅東側再開発「アスピア明石」
アスピア明石は、兵庫県明石市にある再開発ビルだ。明石市の第一種市街地再開発事業「東仲ノ町地区市街地再開発事業」により、2001(平成13)年11月に開業した。運営は例によって第三セクター会社の「明石地域振興開発株式会社」が行っているが、商業エリアに関しては東京建物グループのプライムプレイスなる企業が受託運営を行っており、一般的にありがちな「行政が全部やる」という方向性とはまた違った方針を取っている模様。実際この手の商売は民間の方がよっぽど上手だし、賢いですね。
建物は北館・南館・東館の3棟で構成。このうち北館と南館がメインのエリアとなっており、北館と南館の下層階に80ほどの専門店が入居しているほか(東館の専門店は1ケタしかない)、北館の上層階には公共施設が入るという割とよくある構造。その他住宅も完備されており、総事業費380億円というその規模に恥じない施設が出来上がっている。
核店舗としてはスーパーの「マルハチ」、家具の「ニトリ デコホーム」及び音楽ソフト販売店の「タワーレコード」が入居。しかしこちらもかなりの紆余曲折があったようで、兵庫県の資料によると当初は百貨店の大丸が出店予定だったものの、辞退。その後コープこうべが出店予定も、こちらも撤退。さらに開業後も核店舗の1つだった書店の「リブロ」が閉店するなど、実に複雑な経緯をたどっている。
というのもその理由は明白で、利用客の多いJR明石駅の改札が当施設から離れた西側に寄ってしまっており、距離の割に歩かされるのがその原因となっている模様だ。他のサイトでも「380億円かけた割には・・・」という話が上がっていましたが、そういう立地事情もあるのかもしれませんね。
紆余曲折を経たアスピア明石の今
ここまで、アスピア明石の概要と紆余曲折を経たその経緯について書いてきた。ここからは、そんなアスピア明石がどのような状況となっているのか、その現況をお届けする。
北館と南館を結ぶアトリウムが美しすぎる件
まずは実質的なメインとなっている北館と南館から。施設の中に入ると、まるでイタリアの大聖堂のような巨大な吹き抜けが登場。そのドデカさには取材班も驚かされてしまった。
この巨大な吹き抜けには「アトリウムコート」という名前がついており、現在も定期的にイベントの行われる催物場のような役割を果たしているそうだ。ちなみに元々ここが商店街だったからか、現在は禁止されているのにも関わらず定期的に自転車が通り抜けてしまっているようだが、そこはご愛敬か。
ちなみにアトリウムコートの一角にはちゃっかりパチンコ屋も入居。ただしこのパチンコ屋は他の施設とは完全に分離されており(中で繋がっていない)、パチンコ屋特有の騒音を感じることは一切なかった。音が聞こえなさ過ぎて全く存在感がなかったのには驚きです。
外の様子を見たところで、中へと移っていこう。訪問時(2022年3月)時点のフロアガイドはこんな感じ。割と普通といえば普通だが、あえていえば飲食店が少ないのが特徴的か。北館と南館の連絡通路がずいぶんたくさんある気がするが、便利だし別に良いか。
南館1F、2Fと中を回っていく。さすがに東京建物が受託を受けているだけのことはあってか、非常に明るく、かつシックな雰囲気が出されている。東京の洗練されたファッションビルの雰囲気がそのまま出ているといっても差し支えないだろう。東京建物そのものが都市型の商業施設を中心に取り扱ってきたこともあり、(2019年にリニューアルしていることもあるが)このあたりはさすがの出来である。
しかし、この美しい景色が施設全体には波及していないのがちょっと残念なところ。南館の地下階や3階、北館に関してはちょっと古めのタイルが目立つ景色が全体に広がっていた。南館の3階に関してはトイザらスの撤退もあり、今後リニューアルを行うそうなのでそこに期待だろう。
この手の再開発ビルに入りがちな服屋さんのハニーズも、北館に入居しているせいか、こんな感じの「小綺麗だけど、どことなくパッとしない」風景の中で営業を続けている。「ハニーズ、微妙な再開発ビルに入居しがち説」というのを個人的に提唱しているのだが、ここももしかしたらそうなるのかもしれません。
開業から20年が経過し、駅前により新しい再開発ビル「パピオスあかし」が開業したこともあり、少々押され気味の状態となっているアスピア明石。いろいろと厳しい状況にあるのは確かだが、民間の力を通じてより良い施設を作っていただきたいものですね。
東館の存在感が・・・
これまでアスピア明石の北館・南館の様子を見てきたが、忘れてはならないのがこの東館の存在。下層階が専門店・上層階が全てマンションという、いわゆる典型的な住宅となっている。また、その性格からか北館や南館と比べて1フロアの規模は小さめ。超高層まではいかないものの、いわゆる高層マンションとなっている。
そんなアスピア明石の東館に出店していたのは、郵便局と鍼灸整骨院、そして在宅介護に社会福祉法人・・・。子育ての面ばかりが強調される明石市だが、そんな明石市も高齢者が増える日本全体のトレンドには逆らえていないことをまざまざと実感させられました。