「狭い日本 そんなに急いで どこに行く」。今から50年ほど前、1973年の全国交通安全運動の標語募集で総理大臣賞を受けた秀作だ。しかし実際のところ、日本の面積は狭くもなんともなく、むしろ世界的に見ると広い部類に入るというから驚きである。大量の島が独立してしまっているせいで1個1個の島が小さく見えてしまうからなのだろうが、取材班からすると「狭い日本」という印象が多くの人に植え込まれており、そのせいで日本人は内向的になってしまっているのではないか、とさえ感じてしまう。
実際、日本は広い。そしてそうであるが故に日本には様々な特徴的な風景が残っており、数えきれないほどの文化が残っている。上の写真のような渋谷の風景なんかはその象徴だろう。
そしてお分かりの通り、そんな他と異なる特徴的な風景は全国に残っている。今回ご紹介する「カバンストリート」もその一つだ。
兵庫県豊岡市に所在するカバンストリートはその名前の通り、カバンを扱うお店が多くあるのが特徴だ。今回はこのカバンストリートについて、なぜこんな名前がついているのか、現状はどうなっているのか、そしてこのカバンストリートにあると言われている「カバンの自販機」について探っていく。
かばんの街、豊岡
カバンストリートは、兵庫県豊岡市にある商店街の一つだ。豊岡駅からは歩いて約15分、駅前の「豊岡駅通商店街」、通称サンストーク アベニューを抜けたところにある。なお、この要点街は正式には「宵田商店街」という呼ばれているのだが、地域の活性化のため「カバンストリート」という名前が2005年から愛称としてついており、現在では宵田商店街はどこへやら・・・といった状況となっている。
<サンストーク アベニューについてはコチラ>
どうして「カバンストリート」なる愛称がついたのかというと、別に大した理由はない、豊岡市はカバンの生産量が日本一なのだからだ。
豊岡市におけるカバンの歴史は奈良時代にまでさかのぼるが、カバン産業が本格的に広がり始めたのは明治時代のことだ。東京・上野で行われた第2回内国勧業博覧会において豊岡カバンが出品され、それがきっかけとなって全国にその名が知られたと言われている。1968年(昭和43年)には全国で唯一の鞄の製造所を集めた団地、「豊岡鞄団地」も形成され、現在では革製のカバンを中心に、様々な種類のカバンが製造・販売されている。
そしてそれを裏付けるかのように、現在のカバンストリートにはカバンの形をした謎のモニュメントが展示されていた。そしてその下には
との説明が書かれている。・・・ ・・・ん?
一見まともなことを言っているように見えるこの文章だが、よくよく考えてみると1文目とその後の文に繋がりがないことに気付く。なんなんだ、この文章。なんだかよくわからないモニュメントだな・・・
ちなみに、このモニュメントの一番下に書かれている植村美千男さんは国内でも数人しかいない「JAPAN LEATHER GOODS MEISTER(日本皮革製品マイスター)」に任命された人で、世間では「鞄の神様」と呼ばれるほどの第一人者であることを付け加えておく。正直、取材班なんかがああだこうだ言って良いレベルの人間ではない(笑)現在はカバンストリート内で「植村美千男のかばん工房」というお店も経営しているので良ければ訪問してみてはいかがだろうか。
そんなカバンストリートだが、その名前の通りカバン専門店が多数入っており、カバンストリートとサンストーク アベニューとの角にある「ARTPHERE(アートフィアー)」を筆頭に十数軒ほどの専門店が入居している。また、もともと普通の商店街から発展したこともあってか、鞄屋以外のお店も入っているのが特徴だ。
それにしてもこのカバンストリート、どういう訳かオシャレなお店ばかり並んでいる。なんだか高級ブティックのようなお店が商店街全体に並んでおり、まるでどこかの百貨店に来たかのような感覚を抱いてしまうのだ。このような街並みは東京の銀座や大阪の心斎橋等、都会ではちょこちょこ見ることができるが、豊岡のような地方都市で見るのは相当珍しい。お店の数こそ少ない(公式サイトによると、23軒。2021年4月現在)が、ぜひ頑張っていただきたいと願う次第だ。
しかし、お店の数が少ないということは閉店している店舗も多いということであり、この一部区画ではシャッターが並んでいる。サンストークアベニューもそうだったが、ここもそう変わらないあたり、やはり地方の苦しい現状が垣間見える瞬間だ。一応、経済産業省・中小企業庁の「新・がんばる商店街77選」に認定されるほどのにぎわいを誇る商店街のはずなんだけどなぁ・・・
<この商店街も「新・がんばる商店街77選」に認定されてます>
先ほどの「サンストーク アベニュー」と同じく、カバンストリートも北但大震災で壊滅的な被害を受けたこともあり、その復興建築が各地に現存している。こじんまりしているが、その姿は驚くほど美しく、豊岡にあるにはもったいない(豊岡のみなさん、失礼)ほどだ。現代建築にはないこの独特の雰囲気をぜひ残してほしい、そう願わざるを得ない一日だった。
世にも珍しい「カバンの自販機」とは?
そんな状況下にあるカバンストリートだが、そんな商店街にある面白い自販機がある。「カバンの自販機」だ。
「カバンの自販機」は、先ほど挙げたカバンのモニュメントのとなり、駅から商店街を直進し、カバンストリートと交差する信号を右に曲がったところにある。「カバンの自販機」というからどれほど大きなものなのかと思いきや、意外にも非常にコンパクトな自販機となっており、正直拍子抜けしてしまった。
そんなカバンの自販機で売られていたカバンだが、なんと1個1,500円。本場・豊岡のカバンとはいえなかなかのお値段である。正直これならスーパー玉出のカバンで良いかな・・・と感じる取材班であった。最近はスーパー玉出のカバンも高騰してるみたいだけど、もともと100円だしね、あっちは。