皆様ご存じの通り、日本という国は多数の島々から構成される島国国家となっており、そしてそれに対応するように今日もたくさんのフェリーがそれぞれの島を結んでいる。彼らは旅客だけでなく、ときにトラックや貨物をも運搬しており、それこそ「船による物資こそが島の命」となっている島々も少なくない。
さて、今回ご紹介するのは山口県の柳井市から周防大島町の屋代島を経由し(一部、経由しない便もある)、愛媛県の松山市まで至るフェリー、通称「防予フェリー」なる船である。今回我々はこのフェリーの深夜便を利用したのだが、結論から言うと非常にキツい思いをしてしまった。ということで今回は、この防予フェリーを巡る状況、そして実際に深夜便に乗ると何が起きるのかについてお送りしようと思う。
防予フェリーとは
防予フェリーは、山口県柳井市にある柳井港と愛媛県松山市にある三津浜港とを約2時間30分ほどで結ぶ路線である。一部の便は同じく山口県にある伊保田港を経由する。なお愛称として「オレンジライン」という名称がつけられており、これは就航当時山口県と愛媛県の両県がともに全国でも有数のかんきつ類の栽培地域であることに由来している。しかし、現在では「オレンジライン」と呼ぶ人はまれなようで、知名度で言うと正式名称の「防予フェリー」の方が上のようである。
現在は比較的安定しているものの、2000年代後半には国の高速1000円政策や不動産売却での損失計上により資金繰りが悪化するなど、かつてはいろいろと問題のある船だったようだ。現在は柳井~松山を直接結ぶ路線を「防予フェリー株式会社」が、伊保田港を経由する路線を「周防大島松山フェリー株式会社」が運営しており、時刻表や運賃設定等も含めて様々な面で一本化しつつも、実質的には2つの会社が運航を続けているという状況になっている。
徒歩客のことを考えていない深夜便の時間設定
そんな波乱万丈の経緯を経つつも、現在は安定した経営を続けているこの「防予フェリー」。しかし実際に乗ってみようとすると、ある問題が発生する。実際に防予フェリーの時刻表を見てほしい。防予フェリーの時刻表は、2020年10月1日改正現在、以下のようになっている。
※取材班乗船当時のダイヤです。最新のダイヤはコチラから。
これを見れば分かる通り、本数に関しては中距離フェリーとしてはそこそこの本数が確保されており、神戸~高松を結ぶ「ジャンボフェリー」が1日5本などであることを考えると、十分だといえよう。他のフェリーに比べて船の規模が小さいぶん、本数を多くして需要をまかなおう、という作戦のようだ。
しかし、注目してほしいのはそこではない。深夜便の方である。上の時刻表によると、深夜便は以下のようになっている。
柳井港発 1:00、2:00、4:00
三津浜港発 1:40、3:35、4:50
・・・スゴい時間設定だな、おい。
車を使え、と言わんばかりの時間設定としか思えないこの出航時間である。しかも乗船時間はわずかに2時間半ほど。乗って寝た、と思ったらすぐに到着時間である。おちおち寝てもいられない。それに加え、柳井港の最寄り駅、柳井港駅の始発が岩国方面5:48、下関方面6:41、終電が岩国方面22:24、下関方面23:27であることや三津港の最寄り駅の始発が5時台、終電も22時台にあることもこれに拍車をかけている(柳井港周辺にはバス路線がなく、三津港周辺のバス路線も18時台に終バスを迎える)。要するに、船の中では寝る時間を取れないのに、その前後で異常なまでに待たされるという問題を抱えているのだ。そんな状況下で防予フェリーに乗るとどうなるのか、ここからはそのレポートをお届けしよう。
実際に乗ると・・・
さて、ここからは実際に防予フェリーの深夜便に徒歩で乗船したときのレポートをお届けしようと思う。
防予フェリー柳井港の最寄りはここ、「柳井港駅」だ。実に安直な名前だが、その名の通りフェリーターミナルへの最寄りとなっている。なお、この駅は無人駅となっており休憩や駅構内への入場等は自由にできるが、いかんせん山陽本線の駅となっている以上、貨物列車が多く走行し、とにかくうるさい。鉄道に興味があるのならここで時間を潰すのもアリだが、基本的に快適な睡眠は期待しないほうが良いだろう。
そんな柳井港駅を出たすぐ目の前に、防予フェリーの柳井港フェリーターミナルは存在する。駅を出て信号をわたったすぐのところにフェリーターミナルがあるため、道には絶対に迷わない。これは高評価だ。ちなみにこの周辺にはラーメン店とセブンイレブンがあり、軽い買い物をすることもできる。とはいえ、それ以外には特に何もなく、時間をつぶすにはやや苦しい印象がうかがえる。
なお、フェリーターミナル内はイスが並んでおり、エアコンも十分に効いていて快適に過ごせるほか、1セットだけだがソファも整備されており、空いている間であれば横になって爆睡することも可能だ。もっとも、これに関しては運も必要になるが。
柳井港から三津浜港までの乗船券を購入。今回乗るのは柳井港1:00発・三津浜港3:25着の船となっている。なお、運賃は通常3,660円だが、取材班は(当時)大学生なので学割が適用され2,930円となっている。なんか申し訳ないなぁ・・・。
※現在は大人4,200円・学割3,360円となっています。
通常30分前や60分前など、出発時間よりもかなり早い時間に乗船することの多いフェリーだが、防予フェリーではお客さんが少ないのもあってか、乗船時刻は出航の約10分前と、かなり遅い時間の乗船開始となった。なお、この時の徒歩乗船客数は取材班を含めわずか3名。いくらドライバーが乗るとはいえ、これではさすがに苦しいだろうなぁ。
船の中に入っていく。船内の左右には3人掛けもしくは2人掛けの座席、そして中央に広いカーペットが広がっており、自由に雑魚寝ができるようになっていた。短い時間とはいえ、横になって寝れるのは本当にありがたい限りである。なお、船によってはプール(!)のついている船もあり、夏季になると船内で水泳をすることができるようだが、この船には装備されていなかった。詳しくは下の「船舶案内」からご覧になってほしい。
なお、この日の乗客はドライバーを入れてもわずかに5人のみ。ガラガラの座席ばかりが目立つ、非常に寂しい風景である。
経営の苦しいこの防予フェリーだが、フェリーとして求められる最低限のもの、例えば自動販売機や船内でのフリーWi-Fiなんかはきちんと完備されている。それにしても、2003年から2010年まで使われていた「YOKOSO! JAPAN」のシールが2021年になっても貼られているあたり、なんだか相当放置されているんだろうな・・・というのを感じてしまうのだが、さすがに取材班だけだろうか。
船内は階段だらけだが、バリアフリーにもきちんと対応しており、「バリアフリー客室」なるエリアもちゃんと設置されている。無論、取材班はそれに該当していないため入りませんでしたが。ただ、客室はキレイなのだがエレベーターは更新されていないようで、なかなか揺れる(笑)のでそこは気を付けよう。
午前3時25分、松山・三津浜港に到着。どっかの名門大洋フェリーなんかだと朝5時台の早朝到着の便でも7時頃まで船内で過ごせるサービスなんかがあったりするのだが、この防予フェリーにそんなものが存在するはずもなく、到着と同時にさっさと外におろされる。
そんな三津浜港の周りだが、フェリーターミナル以外本当に何もなかった。本当に何もないその環境下で、取材班は唯一営業を続けるフェリーターミナルの中に座り、疲れと戦いながらただひたすら電車の始発を待つ。それくらいしかできることはなかった・・・。
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