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日本に「ハンバーガー」というものが輸入されてもう50年以上になる。その間、多数のハンバーガーチェーンが生まれ、そして多数のハンバーガーチェーンが撤退した。成長から一貫して成長し続け、いまや日本でも有数のチェーン店となったマクドナルド。日本で最初に「ハンバーガー」を導入し、ダイエーとともに成長したがダイエーの衰退とともに堕落していったドムドムバーガー。日本に上陸も一旦撤退、その後再進出したウェンディーズなどなど、現在の日本はまさに「ハンバーガー群雄割拠時代」と言っても差し支えない時代に突入しているのかもしれない。
そしてそんな「ハンバーガー群雄割拠時代」であるからこそ、マクドナルドのような勝者もあればドムドムバーガーのような敗者が出るのは必定。そして今回ご紹介する「バーガーシティ」もこの例外ではない。今回は、チェーン店であるはずのバーガーシティとして唯一の生き残りとなってしまった「バーガーシティ サンロード店」について、なぜこうなってしまったのか、生き残りのために模索していること、そして実食レポートをお送りする。
バーガーシティとは
バーガーシティは、かつて日本に存在したハンバーガーチェーンの1つだ。近畿地方を中心に最盛期は400店舗ほどを展開しており、マクドナルド等と異なり駅前やテナントビルに小さなスペースの店舗を多く展開することで(実際、現在唯一の生き残りであるサンロード店にも店内の食事スペースは存在せず、実質的なテイクアウト専門店となっている)昭和末期(主に1980年代)に急成長を遂げた。
なぜ急成長を遂げることに成功したのか。それには、バーガーシティの価格戦略にあった。当時はハンバーガーはまだ高嶺の花という時代。マクドナルドのプレーンハンバーガーでさえ200円出さなければハンバーガーが食べられない、そんな時代にあってバーガーシティは「1個100円」という激安価格で提供した。これがきっかけとなり、バーガーシティは人気を博した。当時のCMを見ると「百円満点、バーガーシティ」というキャッチフレーズが登場しており、「100円」という価格がどれほど大きな意味を持つのかをうかがい知ることができる。
しかし、も1990年代に入ると大手ハンバーガーチェーン店がバーガーシティに対抗して小型店を大量展開、さらに円高・平成不況に伴う大手の値下げ攻勢によりバーガーシティの価格・店舗優位性が下がり、経営が悪化。1998年には本部が倒産し、しかも当の本部は加盟店(FC店)に保証金を返すこともせず、なんと夜逃げ。この結果、原材料の供給も滞り多くのお店が閉店。その後も個人経営という形で営業しているお店が何店舗かあったものの、そちらも高齢化や後継者不在により次々と閉店し、今では豊岡市の「サンロード店」のみが残った、という次第である。豊岡市の中心街なんて全然人いないんですが、それでよく存続できるな、と感じずにはいられない。店主の努力に拍手を送りたい(しかも当時の店長はオリジナルメニューを作りたいと以前から考えたとき、本部の倒産を「チャンスだ」と喜んだというから驚きだ)。
昭和遺産ファストフード、バーガーシティ
さて、バーガーシティの歴史について軽く触れたところで、いよいよバーガーシティの生き残り、「バーガーシティ サンロード店」に入っていくとしよう。店前の看板はなんと当時のまま。現在では使われていないWebサイトやEメールのURL、フリーダイヤルの番号までそのまま掲載されてしまっている。なお、現在のメールアドレスは商店街の公式サイトに、電話番号は食べログに掲載されているのでそちらをご覧になってほしい(ここに載せると迷惑メール・迷惑電話の原因となるため、面倒ではありますがクリックしてご覧ください。申し訳ありません)。
店内に入ると、さっそく大量のハンバーガーメニューがお出迎え。どうやら、左側のメニューがバーガーシティ標準のメニュー、右側のメニューがオリジナルメニューとなっているようだ。さすがに当時と違い、「100円ハンバーガー」は現在では存在しないものの、今も170円とハンバーガー店らしい安さを維持し続けている。それにしても、ものすごいオリジナルメニューの数だ。本部が倒産した際「チャンスだと思った」というのもうなずける。
先ほどのメニューには載っていないものの、サイドメニューやドリンクメニューも充実。ポテトやコーラだってもちろん売ってるし、オニオンフライにフライドチキン、シェイクもちゃんと売ってたりする。さすがに個人経営でドリンクバーマシンを持つのは厳しいからなのだろうか、コーラやジュースなどのソフトドリンク類はビンもしくはペットボトルでの提供だ。ある意味潔い。
最近では「唯一」となったことが逆に話題を呼んでいるのか、メディアにもちょこちょこ出演している。しかし、観光ガイドには載っておらず、そうであるが故に観光客の訪問も少ない。まあ観光客に頼らずとも、地元の人だけで十分に運営できてるし、それでも良いのかもね。実際取材班が訪問した際も、地元の小学生と思われる男の子2人組がお店を訪れており、「チーズバーガーで良い?」なんて言いながら買い物していた。地域に愛されるお店はやはり強いのだ。
そんな特徴だらけの店内を舐めまわすように見ていたところ、なんとこのお店が開業したときに使われていた加盟店募集のチラシがあるのを発見した。バーガーシティ サンロード店が開店したのは1987年。まさにバーガーシティ絶頂期であり、バブル景気の影響もあいまって実に個性的なチラシが並んでいたのを嫌でも見せつけられる。それにしても、この本部から裏切られたのにこんなものを貼り続けるだなんて・・・よくよく考えたらすごいことだぞ、これ。
日本最後の生き残り、その味やいかに
さて、いよいよ実食といきますか。今回取材班が購入した商品は3品。「テリヤキエッグバーガー」「フライドチキンバーガー」そして「バニラシェイクS」である。いつも地元の食堂で500円ランチを食らう取材班だが、夢中になっていろいろ買った結果1000円近く買ってしまった。まあ「幻の店」だなんて言われる存在だし、それくらい良いか。
まずは「テリヤキエッグバーガー」から。こちらは昔から提供されている定番メニューの一つで、その名の通り、照り焼き味のビーフパティと卵が挟まれた「伝統の一品」となっている。
そしてその中はもう予想するまでもないだろう。卵焼きに明らかな「手作り感」が出ており、想像通りの「美味しい」一品でした。
続いて2品目、「フライドチキンサンド」だ。こちらに関しては本部倒産後、店主さんが独自に作った「オリジナルメニュー」の一つとなっている。
そんなテリヤキチキンバーガーだが、その中身はもうみなさんが予想する通り。フライドチキンにレタス、そしてマヨネーズソースというあまりにも普通過ぎる構成で、マクドナルドの「チキンクリスプ」なんかよりは幾分レベルは高いものの、感覚としてはそれに近い。素朴な味ですが、でもこれが本当に美味しかった。地域に愛される理由がわかる味でした。
そして最後の3つ目、「バニラシェイクS」である。こちらはもともと頼む予定などなかったのだが、前のお客さんが頼んでいたためつられて頼んでしまった(笑)
このバニラシェイクの感想だが、正直非常に飲みづらかった・・・というのも、このバニラシェイク、ソフトクリームと全く同じ機械で作っているようで、その固さもアイスに対応するように作られており、そのせいでシェイクにすると固すぎてストローで吸っても口に入ってこないのだ。ハンバーガー類に関してはどれも一級品のバーガーシティだが、シェイクに関しては改善を願いたい、そう感じた。
そんなバーガーシティの紙袋には、なんと店主さんの顔をモチーフにしたと思われる似顔絵が描かれていた。おそらくこの店が個人経営になってから書かれたものなのだろう。バーガーシティ最後の生き残りとして、これからも末永く頑張ってほしい、そう感じる一風景だった。