阪急・JR宝塚駅から宝塚大劇場へと向かう道のりのその見事な造りといえば、多くの宝塚ファンの方々は強く共感してくれるのではないだろうか。駅と劇場とを結ぶその整備具合には、宝塚大劇場にどのような方々がいるのか正直よくわからない(申し訳ないです)我々取材班も訪問のたびに驚かされる。
そんな阪急・JR宝塚駅と宝塚大劇場とを結ぶ道のり上にある商店街が「花のみちセルカ」。今では非常に美しい景色を誇るこの花のみちセルカだが、その裏側には実に様々な事情があることが明らかになっており、街そのものが非常に面白い観光地の一つとなっていると言って良いだろう。今回は、そんな阪急・JR宝塚駅東側に位置する商店街「花のみちセルカ」について、その様子を見ていくこととしよう。
ソリオとは別の再開発で生まれました「花のみちセルカ」
花のみちセルカは、兵庫県宝塚市に位置する再開発ビル兼商店街。宝塚市の再開発事業「宝塚駅前地区第二種市街地再開発事業第7・8街区」により2001(平成13)年に完成した。
「第7・8地区」という名前から分かる通り、宝塚駅前地区の再開発事業は非常に広範なエリアに及んでいる。このうち、第1~第6エリアは「ソリオ宝塚」というこれまた別の再開発ビルが建設されており、こちらも現在に至るまで営業が続けられている。
ただし、これらのエリアは実際のところ全く別に再開発が行われたというのが実情のようで、宝塚市公式サイトにも
ソリオ 事業期間:昭和61年10月20日~平成7年5月8日
花のみち1番館、2番館 事業期間:平成8年12月25日~平成13年3月31日
という記述がある通り、これら2つのエリアは完全に別の形で開発が行われたのが分かる。元々このエリアは元々他と変わらない普通の商店街があったが、阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けてしまい、その復興事業として大規模に再開発を行ったという経緯があるようだ。実際、震災時に全体の65%の建物が全半壊したという記述もあり、その被害の大きさを感じさせる。
震災を乗り越えて現在の姿になった、そんないかにも兵庫県という歴史を持つこの花のみちセルカだが、その商店街の様子は現在どうなっているのだろうか。ここからは、花のみちセルカの商店街エリアの様子、及びその裏に隠された「商業施設3層化計画」について見ていこう。
異国情緒溢れる雰囲気と個性的な店舗、そしてその裏に隠された幻の「商業施設3層化計画」とは
花のみちセルカの概要について触れたところで、その様子について見ていくこととしよう。建物は上層階がマンション、下層階が商店街という典型的な再開発エリアらしい状況。高層マンションが2棟建っており、商店街のある地上階と2階で接続する形となっている。
さっそく中へと入っていこう。・・・すごい。本当にすごい。再開発されたという事情があるのは事実だが、それを抜きにしても非常に美しい雰囲気が全体に漂っており、商店街らしくない高級感を感じさせる。
遅くなったが、2023年訪問時のフロアガイドを見ていこう。商業エリアは1~3階に位置しており、1階・2階に商業店舗が、3階にはオフィスやセラピールーム、保育施設等が出店している。3階は商業エリアとなっているものの、1・2階と比べるとやや別のタイプの店舗が出店している印象だ。
では、なぜこの3階が商業エリアとして開放されているのか。その裏には、花のみちセルカの建築を行う際に計画されていた「商業施設3層化計画」が裏にあるという。
※「商業施設3層化計画」は当取材班側で名付けたものです。
元々この花のみちセルカを建築する際、1階~3階の3層に商業エリアを作る予定だった。そして、1階と2階、及び2階と3階との間にエスカレーターを設置し、商業エリアの回遊性を持たせる予定だったのだという。
ところが、建築基準法の関係で2階と3階とを結ぶエスカレーターを設置できないことが建築中に判明。設計の変更を余儀なくされてしまい、結果商業エリアを作ることそのものは継続となったものの、階段とエスカレーターのみでしかアクセスできない状況となってしまったのだという。
なお、この花のみち1・2番館の3階部分には「宝塚はな回廊」がオープン。花と緑をテーマにした施設が営業していたようだが、アクセスの悪さからか早々と撤退。紆余曲折あった挙句、現在のような状態に落ち着いているという状態である。いろいろとあったのは事実ではあるが、やはりアクセスの悪さが仇となった感は否めない。
とはいえ、この建物の素晴らしさと整備具合に関してはお見事の一言。少々お客さんが少ないのが気がかりだったが、全く問題ないでしょう。今後にも期待しています。