かつて神戸一の繁華街としてその名を馳せた、新開地・湊川エリア。現在ではその地位も下がった気がしてならないが(というより下がっている)、今もこのエリアには500もの店舗が商店街の中にひしめき合っており、毎日激しい競争の中で生き続けている。消費者としては安く商品が買えるのでうれしい限りだ。
さて、今回は神戸市兵庫区は「東山商店街」なる場所に来た。東山というと京都の東山文化ばかりが浮かんでくるが、東山という名称は京都に限ったものではないようで、Wikipediaの「東山」の項目にも数多くの場所が記載されている。今回は、神戸市の東山こと「東山商店街」、およびその北側に位置する、湊川地区の商店街で最北の市場「マルシン市場」について、その様子をお届けするとしよう。
自称・関西No1「東山商店街」
東山商店街は、湊川商店街を構成する商店街の一つだ。湊川地区周辺の商店街一帯で構成される「神戸新鮮市場」の一つを占めており、公式サイトによると「規模は関西No.1」を誇るそうだ。その割にはあまり知名度が無い気もするが・・・。とにかく先に進もう。
東山商店街は湊川地区でもやや北に位置しており、最寄り駅である神戸市営地下鉄湊川公園駅・神戸電鉄湊川駅からはやや距離が離れている。しかし、商店街の南端で同じアーケード商店街である「上湊川本通」に接続しているほか、上湊川商店街およびその先にある湊川商店街を経由することにより、駅まで傘を差さずに行くことができる。そう考えると、極端にアクセスが悪いとは感じない。
東山商店街の中へと入っていく。「神戸の台所 東山商店街」という旗が踊っており、非常に賑わう商店街であることを示している。ただ、南端には東山商店街であることを示す看板が無いため、初見だと少々わかりにくいかもしれない。当サイトの写真を見てよく判断していただきたい。
東山商店街は300mほどの商店街で、規模でいうと中程度の商店街になるのだが、通路が狭く人が滞留しやすいこと、南から北に向けて坂が続いていること、そして昭和の雰囲気が色濃く残っていることもあってか、実際の規模以上に広く感じられる。ディズニーランドが広く感じるのと同じようなことなのかもしれないが、実に渋い雰囲気の残る、味のある場所だ。
今や少なくなった商店街のネオン看板も、この東山商店街にはいまだ健在。素晴らしい景色です。
しかし、どうしてこうも郷愁を感じてしまうのだろう。もう令和の世の中へと入っているのにも関わらず、お店がどんどん新しくなっているのにも関わらず、このアーケードのせいなのか、それとも随所に設置されている装飾のせいなのかわからないが、なぜか「古き良き昭和」を感じてしまう。
この東山商店街、公式サイトでは「細い道の両側にぎっしり食料品店が立ち並ぶ」と説明されており、「神戸の台所」という愛称からも、いかにも食品関係のお店ばかりが並ぶ印象を受ける。しかし実際のところ、この商店街に並ぶのは何も食料品の店舗のみに留まらず、靴屋や花屋、雑貨屋、さらにはマッサージ店など、ありとあらゆるお店がそろっている。さながら「昭和のショッピングセンター」の様相だ。
東山商店街の北側にはこれまた非常にキレイな大屋根が設置されている。そしてこの屋根の下にある広場には老人たちがのんびり座ってお酒を交わす・・・ 非常に見ていて気持ち良い光景なのだが、ウイルスが猛威を振るう中でこんなことして大丈夫なのか??
商店街への北端へとやってきた。商店街の南端に看板が無いのとは異なり、こちらにはご立派な看板が設置されている。しかもこちらもまさかのネオン看板。夜になったら光るのでしょうか。気になって仕方がありません・・・。
湊川地区の北端「マルシン市場」
東山商店街を抜けた先、その北端のすぐ隣には「マルシン市場」という商店街が軒を連ねている。こちらも1947年開場の歴史のある市場で、阪神・淡路大震災による被災後、現在は1997年に建てられた3代目の建物が元気に運営を行っている。
ちなみに「マルシン」という名称だが、「丸神」という漢字が当てられている。
マルシン市場の中へと入っていく。神戸市小売市場連合会のwebサイトでは「まるごと新鮮、まるでデパ地下!!」というサブタイトルが付けられているが、それにも負けず劣らずのご立派な中身である。さすがに規模は小さくはなりますけどね。
マルシン市場の中には、八百屋や肉屋といったいわゆる「普通のお店」のほか、「鹿児島物産」なる、鹿児島の商品に特化しているお店もあり、見ていて全く飽きない。大阪に沖縄の商品ばかりを扱っている商店街やお店があったが、鹿児島というのは初めて見た。日本全国で見ても、これは相当珍しい存在ではなかろうか。
ちなみに鹿児島物産の店主さんいわく、「商品の90%は鹿児島から持ってきた」とのこと。「鹿児島物産」というよりは「九州物産」と言ったほうが正しいかもしれない。
そんなマルシン市場で最も有名なお店が、この「原とうふ店」だろう。今や全国に展開するドーナツ店「はらドーナッツ」の原型となったお店で、知名度こそあまり高くないものの、非常に美味しい豆腐を提供してくれる。このお店に関しては別記事で特集します。
しかしそんなマルシン市場、その中では「マルシンいちばへ ようこそ」というチラシが、まるで電車の車内広告のように随所に設置されていた。シンプルイズベストをまるで象徴するような美しい広告だが、そのあまりの空白の多さに一抹の寂しさを覚えてしまう、そんな取材班でした・・・