神戸市中央区の商店街は、三宮センター街のような「多くの人で賑わう商店街」と二宮商店街のような「瀕死状態になってしまっている商店街」に二極化されている部分があるようで、その間に位置する「人こそ少なくなったものの、まだまだ元気な商店街」というものが存在しないらしい。今回は、そんな神戸市中央区の商店街のうち、「後者になりかけてしまっている」商店街の話である。
今回やってきたのは、神戸市中央区「春日野道」駅である。三宮のすぐ隣に位置する駅であるこの駅だが、同じく三宮のすぐ隣にある元町なんかとは異なり、住宅や商店街といった地元に根付いた風景の広がる閑静な駅となっている。駅前にどでかい廃墟モドキのある三宮の隣の新幹線駅なんかとはえらい違いだ。
そんな春日野道の駅前には「春日野道商店街」と書かれた立派なアーケードのある商店街が位置しており、人々の憩いの場となっている。しかしこの春日野道商店街、ある非常に複雑な事情を抱えているのだという。今回は、神戸市中央区の、とある事情を持つ商店街「春日野道商店街」について、その事情の中身と現状の様子についてお届けすることにする。
一見普通の商店街、でも実は..
春日野道商店街は、兵庫県神戸市中央区に位置する商店街だ。阪急春日野道駅・阪神春日野道駅の双方からアーケードに直結しており、このアーケードの中を通り抜けることで阪急・阪神双方にアクセスできる商店街となっている。また、JRの線路も阪急春日野道駅のすぐ南側にあるものの、こちらはホームがないため乗り降りすることはできない。まあ隣に三宮があるような場所だし、そんなに重要な拠点という訳でもないんですけどね。
春日野道商店街の周辺には「大安亭市場」「大日商店街」「葺合センター街」などなど、数多くの商店街が位置している。春日野道商店街はこれらの商店街と競合関係であり、また同じ仲間でもあるのだ。近年、これらの商店街の周辺にも多くの商業施設が出来ているが、これらの商店街もなんとかしぶとく生き残っている様子。
軽く説明を終えたところで、さっそく商店街の中へと入っていこう。商店街は1番街から5番街の5つの街区に分かれているが、それぞれに大きな違いはほとんどなく、実質的には同じものとみなしても問題なさそうだ。近年では再開発が行われ、マンションが何棟も立ち並ぶようになっているが、こちらはまだお店も多く残っており、同じ中央区のサンロードクニカのように歯抜けにはなっていないようだ。
しかし、商店街の中をよくよく観察してみると、ある不思議なことに気付く。1番街から5番街まである商店街のうち、3番街だけなぜか全然違う看板が使われているのだ。1,2,4,5番街は全てレインボーに囲まれた看板を使う一方、3番街だけはなんだかよくわからないキャラクターの使われた看板が整備されている。いったいどういうことなのだろうか。
というのも、それもそのはず、なんとこの春日野道商店街、3番街だけ全く別の商店街として成立しているのだ。一見普通の商店街に見えるこの春日野道商店街だが、かつて1980年代に商店街の中で内紛が起きたそうで、結果3番街だけが春日野道商店街の振興組合から独立。「春日野道商店街3番街」なる別の組合を作り、今の今に至るまで2つの組合が並行して存在している状態にあるというのだそうだ。このことはあまり公にはされていないが、事実神戸市商店街連合会のサイトには「春日野道商店街」というページと「春日野道商店街3番街」というページが別々に存在しており、その現状が驚くほど鮮明に映し出されている。
これに関しては今も根深い問題が残っているようで、「春日野道商店街」のWebサイトには春日野道商店街3番街の部分だけ店舗内容が一切記載されておらず、逆に「春日野道商店街3番街」の中に掲示されている地図(上の写真参照)には3番街以外のお店は一切掲載されていない。「春日野道商店街」とマップには書いてあるのにも関わらず、だ。本当はお店の人にでも聞いてみたいものだが、あまりにデリケートな部分になるためさすがに辞めておこう。
ちなみに春日野道商店街には「インフォメーションカウンター」という場所があり、商店街について様々な情報を得ることができる。便利な場所ではあるのだが、いかんせんこういう情報になるので、春日野道商店街3番街についてうかがう際にはご注意を・・・。
内紛と震災に悩まされた春日野道商店街、その現況
春日野道商店街の歴史と内紛について語ったところえ、春日野道商店街の中について学んでいくとしよう。春日野道商店街は阪急電車と阪神電車とを南北に結ぶこともあってか、全体的にやや傾斜のついた商店街となっている。この辺は神戸市内の他の商店街と同様。このような構造をした商店街としては東灘区の「甲南本通商店街」があるが、これと非常に似ている。
商店街の中を回っていく。震災によって商店街が大きくやられ、その後再建したということもあり、全体的に小綺麗な街並みが広がっている。
近年ではお店が少なくなり、何棟ものマンションがそびえ立っている。三宮まで1駅、梅田も1本で行けるということでそれなりの人気を誇っている。しかし、面白いことにどのマンションも「三宮東」なる名称を使っている。「春日野道」じゃ人気が出ないから三宮の名前を借りてるってか。いかにもな話ではあるが、商店街の名前が春日野道商店街なのにその中にあるマンションが「三宮東」ってのも変な話ですね(笑)
春日野道商店街を抜け、春日野道商店街3番街の中へと入っていく。アーケードや入居しているお店に大きな違いはなく、本当に普通の商店街にしか見えない。とてもこの商店街の中で内紛が起きているとは思えない風景だ。綺麗な姿をしているだけに、どうにかならないのかな・・・。
商店街の中を見ていると、住友ゴムやJFEスチール等、重工業関係の広告が商店街のいたるところに設置されていることに気付く。これはかつて川崎製鉄や神戸製鋼等の重工業の工場が多くあった名残として設置されているものなのだが、これらの工場が移転した今は少し寂しい光景が広がっている。かつてはこれらの従業員が商店街の顧客となっていた時期もあったそうだが、それもなくなった今は相当苦しい状況にあるようだ。マンションが立ち並ぶのも分かる。
全盛期に比べると衰退が隠せないこの春日野道商店街だが、最近ではベトナム料理専門店や白髪染め専門店といったお店が進出しており、何とかテコ入れを行っているようにも見える。でもやはり苦しいのは変わりないようで、マンションが多く並んでいることからもその現状がうかがえる。
パチンコ屋の前から商店街をうかがう。商店街の中で最も人で賑わうのがパチンコ屋というのも皮肉な話だ。結局商店街というのは、核テナントによって支えられている。その現状を感じずにはいられない取材班でした。