先日、兵庫県神戸市の代表的な繁華街・三宮において、「繁華街らしさ」を表している場所に大きな偏りがあることを指摘し、その例として「サンパル」と呼ばれる、三宮駅南側にある再開発を予定するビルをご紹介した。
しかし、昭和の光景が残っているのはなにもサンパルだけに留まらない。今回はそんな三宮のすぐ近くにあるにも関わらず、昭和らしいエキゾチックな風景が残されている商店街、「二宮商店街」をご紹介する。
二宮商店街 三宮から徒歩5分とは思えないこの惨状!
二宮商店街は、JR・阪急・阪神・地下鉄・ポートライナーの集まる三宮駅から歩いて5分ほどの場所にある。距離で言うと三宮センタープラザなんかと同じくらいのところにあるのだが、神戸の中心地から近い割になんとも昭和らしい光景が残っている。とはいえ、入口の看板だけ新調されているようで、あまり古さを感じない。
しかし、中に入ればそこはもう別世界。しかも完全に昭和ではなく、微妙に平成や令和の風景が入っているのが妙にそそる。どういうわけかユニバーサル・スタジオあたりにありそうな風景だと勘違いしてしまうのだが、さすがにそう感じるのは取材班だけか。それにしても、同じ三ノ宮駅近くにある「三宮センター街」とは何もかも違うから困ってしまう。チェーン店ばかりが立ち並び、もはや商店街なのかなんなのかわからなくなってしまう状態になっているあちらとは大違いで、こちらはもう土着民しか相手にしていないのだろう。それにしても、半分見放された感がものすごい。
一応戦後から営業している歴史の長い商店街にはなるのだが、閉まっているお店も多く、そうであるがゆえに買い物客の姿もまばら。悪循環に入っている気がしてならない。
そんなこともあってか、一部のエリアは完全に取り壊され、マンションが建ってしまっている。確かに商店街としては良くないのかもしれないが、三宮駅徒歩5分という立地は住宅としては最適なのだろう。それにしてもこんな中心地にマンションが建つあたり、関西の衰退っぷりを感じてしまうのは取材班の良くない偏見か。
そんなマンションだが、あまり治安は良くないようだ。訪問した日は3月17日。次の段ボール回収日まであと1週間近くあるにも関わらず、「ホカノ日は出すな」とわざわざ赤字で書いてあるにも関わらず、既にマンション前は段ボールで散乱してしまっている。おそらく単身者向けのマンションなのだろう。もう少しどうにかなりませんかね、これ・・・。
そんな苦しい状況下にある二宮商店街だが、その中で唯一賑わっていたのがこちら、「御菓子司 月ヶ瀬」さん。いつも賑わっているこちらのお店だが、訪問時はお彼岸にあたることもあってか、特に賑わっていた。これだけお客さんがいれば安泰というものなのだろう。二宮商店街でお客さんを集める唯一のお店として、これからも頑張っていただきたいと感じる次第だ。
二宮市場はもっと酷かった件
二宮商店街のアーケード下には、「公認 二宮市場」という、先ほどの二宮商店街とは全く別のアーケード商店街が接続している。こちらは大正12年(1923)年から営業を開始しており、戦時中に一度空襲で壊滅したが1960年に新しいアーケードを完成、現在も営業を続けているというから驚きだ。
しかしその中身はどうかというと・・・うん、マズいね。1960年に建てられたアーケードがろくに改修もされず、完全にボロボロの状況だ。しかもお店は閉まりに閉まっており、営業しているお店はわずかだ。右側なんか、シャッターに落書きまでされちゃってるし。一体全体、何があってこんな土着民向け市場にいかにもな落書きをする状況になるんでしょうか。気になって仕方がない・・・
そんな落書きだが、もはやこの市場にそれを消す余力はもはや残っていないようで、日を追うごとに悪化しているようだ。二宮市場の苦しい状況が垣間見える瞬間だ。
しかし、この状況に対して市場側も対策を取っていない訳ではない。市場側では、この素晴らしいアート(?)に対抗するかのように、市場側でも「二宮まちかど 壁画プロジェクト」と称したアートを展開している。とはいえ、商店街の空きテナントを埋められるほどの力はもはや残っていないのか、この展示も一部に留まっている。ボロッボロやないですか、お客さん。
もともと二宮市場は2つのアーケード商店街から構成される商店街だったのだが、現在は衰退に伴い、2つあったうちの1つが取り壊され、現在では和田興産によってマンション(アパート)の建設が進められている。ワコーレ系のマンションって、オシャレではあるんですが癖が強すぎて住むとなるとなかなか難しいところなんですよね。三ノ宮駅徒歩5分という立地だけは良いからちゃんと再開発されるとはいえ、なぜか少し寂しくなる。
もはや10店舗ほどしかお店の残っていない二宮市場だが、そんな市場であるにも関わらず、毎週金曜日は「奉仕日」として還元を行っているからびっくりしてしまう。それにしても、スピードくじを引く条件が「200円お買い上げ毎に」って・・・ 一体いくら買い物することを想定しているのか、逆に気になってしまう。コンビニの700円スピードくじもビックリでっせ。
ま、その奉仕日ももともとは火曜日と金曜日の週2回やっていたようですがね。店舗の減少に伴い、奉仕日を週2回から週1回へと減らした模様だ。近くの関西スーパーさんは全品10%引きセール日を月曜日のみから月・火曜日の週2回に増やしているようですが、二宮市場さんはやらないのでしょうか。
そんなボロボロの市場だが、今では事務所も完全に閉ざされ、「←事務所・手洗」なんて書いてある場所すらシャッターが下りてしまっている。もうこのまま朽ちるしかないのか・・・
いろいろと苦しい状況下にある二宮市場だが、そんな市場の一角に実に気になる建物があったので最後にご紹介しておく。こちらの建物、開放的な雰囲気の漂う市場の中で唯一、堅苦しい雰囲気を醸し出している。ドアの前には硬そうな鉄格子、左上には監視カメラのような謎の装置、そしてなぜかグレーに染められた塗装。おそらく893さんのものだと思われるこちらだが、実は一切情報が上がっておらず(神戸山口組が二宮町に所在を構えているのは有名だが、ここの住所と一致しない)、何があるのか何もわかっていない。そこで、この記事をご覧になっている皆さんに情報を募集したい。この建物について何かご存じの方、いらっしゃいましたら当サイトのお問い合わせページもしくは当サイト公式TwitterアカウントのDMよりお知らせ下さい。皆様のご連絡をお待ちしております。
アーケードの外にも残る「昭和」の面影
三宮からすぐの場所にあるにも関わらず、昭和の雰囲気を色濃く残す街、二宮。しかし、この昭和の雰囲気は何もアーケードの中に留まらない。神戸の「異国情緒」はどこへやら、このエリアには昭和の光景ばかりが目に入ってしまう。
アーケード街の外側には、三宮に近いにも関わらずいったいいつから営業しているのかもわからないお店がちらほらと営業を続けていた。これも昔からのお客を大切にしていたから実現できたことなのだろう。それにしてもここまで来ると笑うしかない。
三宮駅の東側にあたるこのエリアは、神戸市内でも有数のコリアン集住地、「生田川地区」にも近く、この二宮エリアにもちょこちょこと韓国料理店を見ることができる。とはいえ、この辺に関してはそれほど濃いエリアでもないようで、結局やはり「ちょこちょこ」程度しか見れないようだ。もうちょい東側に行くともっとガチな光景が見れるのだが、それは後に回すとしよう。
三宮から徒歩5分で行けるアーケード商店街、二宮。そこには、驚くべき昭和の光景が、半分見捨てられた状態で残っていた。