東京の新大久保や大阪の鶴橋が韓国人街になっていることは巷でも有名だ。しかし、日本にはこれらの場所以外にも多くのコリアンタウンが存在していることはあまり知られていない。今回ご紹介する、「大安亭市場」もその一つだ。
当サイトをご愛読の方ならもう嫌というほど聞いているかもしれないが、神戸に「おしゃれ」などという印象を持つのは明らかな早計で、確かにそういうエリアもあるにはあるのだが、結局ここは関西。特に大阪から20分ほどで行ける神戸に大阪の影響が回るのは当然のことで、そのせいなのかそのおかげなのかよく分からないが、大阪に住んでいても驚くような下町庶民文化がそこらじゅうに転がっていたりする。そしてそれは、今回ご紹介する大安亭市場においても同様だ。
そこで今回は、大安亭市場について、「現状はどうなっているのか」、そして「韓国及び他の国々との関係はどうなのか」という2つの面についてお届けする。
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地元民向け超土着型商店街です
大安亭市場は、阪急神戸三宮~春日野道駅の中間付近に位置する。一応最寄り駅は阪急春日野道駅、阪神春日野道駅(同じ名前の駅だが、別の場所に所在している)となっているが、これらの駅からも徒歩7~8分程度かかり、どちらの駅前にも別のアーケード商店街があることを考えるとアクセス面は決して良いとはいえない。一応これでも大阪の黒門市場や京都の錦市場なんかと肩を並べる存在にあたるらしいのだが、前述の2つの商店街に比べると知名度も大きく劣るし、なんだかなぁ・・・と感じてしまう次第だ。ちなみに余談だが、「大安亭」は「おおやすてい」が正しい読みなので要注意である。取材班は訪問まで「だいあんてい」だと思ってました←
そんな大安亭市場の内部だが、いかにも下町という状況だ。南北およそ250メートルに青果や精肉、鮮魚、飲食店などといった多種多様な店舗が連なっている。全盛期は100店舗ほどのお店が軒を連ねていたそうなのだが、この状況下ではやはり苦しいのだろう、現在は70店ほどまで減少している。とはいえ、昔からの人情味に惹かれる人も多いのだろう、こんなレトロな商店街であるにも関わらず多くの人が今日も買い物を続けていた。
そんな中でも特に多くの店がしのぎを削っているのが青果部門だ。そんなこともあってか、野菜や果物に関しては特に安い値段で売られている。こちらの「ながお」さんは八百屋・果物屋以外にお菓子屋も運営しており、1店舗のみを経営する零細店が立ち並ぶ大安亭市場の中では「勝ち組」なのかもしれない。とはいってもここ以外には無いのだが。
さて、こんなことを書くと「野菜や果物以外のお店は高いの?」という疑問を受けるかもしれないが、決してそんなことは無く、いわゆる「商店街価格」が大安亭市場全体に広がっている。こちらのバーゲンハウスさんなんか、オジ服・オバ服限定にはなるものの、他では見られない激安価格で洋服を提供していた。
訪問時、特に安かったのが靴下。1足85円、3足で250円というとんでもない価格設定だ。靴下ごときに1足390円、3足990円もかかるユニクロなんかとは大違いである。ユニクロ、GU、しまむらなんかクソくらえってか。関西人、恐ろしい・・・。
個人店よりチェーン店派という方といるかもしれないが、そんな方もこれさえあればもう安心。「業務スーパー 大安亭店」もちゃんと出店していますよ。ちなみに一番混んでたのがここだったのだが、それについては大丈夫なのか、少し心配になる取材班でした。
多国籍化の進む大安亭市場
令和になった今でも大きなにぎわいを見せる大安亭市場だが、最近では様々な国の文化が混じり合う、「多国籍市場」として変貌を遂げ始めている。
もともと大安亭市場は、韓国との関係が強いエリアだった。以前の記事でも述べたが、もともとこのエリアは神戸市内でも有数のコリアンエリアである生田川地区に近いことや、近くに川崎製鉄や神戸製鋼等の工業地帯が存在したこともあり、在日韓国人・朝鮮人が多く住んでいたという歴史と関係があるようだ。そして、彼らの生活に必要な必需品を売る店ができ、結果今に至るという訳だ。そこには様々な苦労があったわけだが、ここではあえて割愛しておく。
しかし、そんな状況にある大安亭市場にも、最近ではお店の構成に変化が生じてきているようだ。特に顕著なのが中華系の店舗で、昔から存在はしていたものの、ここ数年で数を伸ばしてきているようだ。
最近増えた中国系物産店がこれまでの韓国系物産店に比べて大きく異なる点としては、「日本人をターゲットにしていない」ということが挙げられる。店前の看板はどれも中国語で何が書いてあるのか意味不明(一応、漢字なので全く分からないということはないが)、商品説明には日本語訳が書かれておらずGoogle翻訳が必須、そして極めつけに店員が日本語をよく理解しておらず、言葉が通じないこともあるといった様相だ。
店先看板ですらこんな状況である以上、扱っている商品も完全にチャイナライズされてしまっており、いったい何なのか見当もつかない品物が大量に並べられてしまっている。「东光酸菜」は1袋200円、「罗汉果」は1個150円といった具合だ。正直全くわからない(笑)
この手の商店街ではもはや恒例となってしまっているインドカレーのお店も健在。この手の店にいるのは大抵インド人ではなくネパール人だったりするのだが、ここに関してはどうなのだろうか。
最近では韓国・中国系以外のお店も増えてきているようで、「インターナショナルフーズ」を掲げたアラビア系なのかインド系なのかよくわからない商品を取り扱うお店も出てきている。どうやら先ほど挙げたインドカレー屋もここで材料を仕入れているようで、店先で談笑している姿を目撃することができた。それにしても彼らは何語を話しているんだ・・・取材班には全く理解することができない。
そして、その類の店は往々にしてよくわからない政党たちの餌食になるのがオチだ。国際化しても変わらない、下町風情の漂う風景がそこには残っていた。
大安亭市場のアーケードを北に抜けると、目の前にはJR及び阪急神戸線の高架が現れ、さらにその先まで商店街が連なっている。お上品なことで有名な阪急マルーンの電車も、このエリアまで来ると完全に下町エリアだ。ま、どうせ特急電車の終点は新開地なんで似たようなものなんですが。それにしてもお上品なはずの阪急高架下がこんなボロボロの廃墟のまま放置されているのも、このへんくらいだろう。一応数年前までは八百屋なんかも営業してたみたいなんですが、今ではシャッターを下ろしたままだ。
このアーケードを抜け北側に出ると、これまた違う商店街に出るのだが・・・ これについては次の記事でお送りするとしよう。