兵庫県神戸市の再開発エリア、神戸ハーバーランドは勝ち組と負け組の2種類に大きく分かれており、前者の例として「umie」や「モザイク」、後者の例として「神戸ハーバーセンター」があることを以前解説した。
<ハーバーセンターについてはコチラ>
この神戸ハーバーランドだが、神戸市最大の繁華街・三宮や庶民的な雰囲気を残す商店街、湊川などが近くにあることもあり、「株式会社神戸市」と呼ばれ、神戸市こそが自治体経営の見本であるともてはやされた頃に建設された割には全体的に中途半端な位置づけになってしまっており、商業面で成功しているのはumieやモザイクくらいであり、それ以外の施設はどこも苦戦を強いられている、というのが現状である。今回は、そんな神戸ハーバーランドで苦戦を強いられている施設のうちのひとつ、「プロメナ神戸」を特集する。
<株式会社神戸市についてはコチラ>
18階建て高層ビル、その全てが商業施設
「プロメナ神戸」と聞いても、おそらく多くの神戸市民はどの建物なのかよくわからないのではないのだろうか。というのも、JR神戸駅や高速神戸駅から神戸ハーバーランドへ向かうとき、もしくはその逆方向へと向かうとき、umie方面の出口がある26番出口へと直接向かってしまうからだ。すぐとなりにプロメナ神戸への地下直結口があるにも関わらず、だ。
では、プロメナ神戸とはいったいどんな建物なのか。プロメナ神戸は、この建物だ。
(公式サイトから抜粋)
どうだろう。実に立派な建物だと見てすぐに分かるだろう。これだけ大きければ普通はすぐに気づくと筆者は考えるのだが、やはり興味のないものは目に入らないのだろう。ちなみに、このとなりにはあのumieがあるのだが、まあしょうがない。
さて、こんな高層ビルを構えるプロメナ神戸だが、中にはいったいどんなテナントがはいっているのだろうか。以下は、プロメナ神戸に入るテナントの一覧だ(テナント一覧は、2021年2月23日の公式発表に基づく)。
18F しゃぶしゃぶ木曽路
7,8,9,10,11,12,13,14,15,16F 神戸ハーバーランド温泉 万葉俱楽部
5F スターマン(リサイクルショップ)
4F アロマテラピーサロン Selene、悦慕、ボーラ・ザ・ビューティ、スタジオ・ウインド、やまもと静脈瘤クリニック、KING’S SALON
3F こがた内科 ハーバーランドリウマチクリニック、神戸みなと薬局、しばきた消火器外科・肛門クリニック、医療法人かけはし会 脳神経内科 くすのき診療所
2F キャンドゥ、アシュラン
1F サンマルクカフェ、BOLT CAMP、BOLT BASE、ハッベルバグリー、dog salon Pele、淡路八百屋番長、ほけんの窓口
B1F リンガーハット、かつ丼 吉兵衛、どんぶりマルナカ、ケンタッキーフライドチキン、ナマステ・ガネーシャ・マハル、隆記、三豊麺
さて、これを見れば分かるだろう。
18階建てのこの高層ビルは、全て商業施設なのだ。
なぜこんなことになってしまったのか。それには、このプロメナ神戸という施設の歴史を見ていかなければならない。
もともとプロメナ神戸は、1992年、大阪ガス及び髙島屋グループが折半する形で建設され、開業した。しかし、神戸ハーバーランドの集客力の弱さが災いし、2002年に髙島屋グループは撤退、大阪ガスはこの停滞するビルをモルガンスタンレーグループへと売り払ってしまった。
しかし、立地が立地であるだけに集客に苦戦、下層階は埋まっても上層階が埋まらないという状態が長く続き、一時期は高層ビルであるにも関わらず卓球場が入居するなど、様々なしがらみを抱える状況が長く続いた。
状況が変わったのは2010年のことだ。7F~16Fという、これまで長らく空室が続いていた高層階に万葉倶楽部が入居、課題となっていた高層階問題を解決することに成功したのだ。しかしその一方、今度は低層階での退去が続出。特に2013年にリニューアルオープンした「神戸ハーバーランドumie」の影響は非常に大きく、その問題は解決されないまま今に至る。
ここで、一つの疑問が浮かぶだろう。
「高層階に、オフィスを入れれば良いのでは?」
と。しかし、2002年にそんなことが果たしてできただろうか。既に損失を多く抱えているプロメナ神戸が、多額の資金を投入して商業フロアをオフィスに変えるという選択ができるだろうか。まして、2002年といえばITバブルの崩壊直後、いわゆる「氷河期」と呼ばれる時期。さらに1995年の阪神・淡路大震災発生により神戸市そのものの活力が落ちている状況。
プロメナ神戸の今は、なるべくしてなったのだ。次の項目では、このプロメナ神戸の状況について、写真を踏まえつつ解説していこうと思う。
やる気のないお店たち
さて、ここまでいろいろと綴ってきたが、ここからはいよいよその中身に入っていくとしよう。
プロメナ神戸へのアクセスはなかなか便利で、JR神戸駅や高速神戸駅から繋がる通路を抜けてすぐのところにある。JRから徒歩3分、高速神戸駅からは徒歩5分といったところだろうか。近いわけではないものの、地下街を通るため雨にぬれずに行くことができる。これは大きなメリットだろう。
エスカレーターを上ると、「ハーバーキッチン」という看板とともに、4台のディスプレイがお出迎え。それにしてもなんだこの昭和チックな動画は。いきなり不安を覚えてしまう。
プロメナ神戸を入るといきなり「ハーバーキッチン」と出てくるのは、その名の通りハーバーキッチンなるフードコートが地下道直結階にあるからなのだが、そのハーバーキッチンでさえ丸亀製麺が閉店するなど、その現状は明るいとは言えない。プロメナ神戸は外食に強いことが強みだったのだが、そこにも暗雲が立ち込めている。
エスカレーターを上がって1階に上がってきた。しかし、お客さんの数はまばらだ。いかにも現代的なショッピングモール、ギラギラと光る地下のハーバーキッチン、そして少なすぎる人。日曜に訪問したにも関わらずこのありさまだ。いったいどうなってるんだ。
日曜だというのに、既に閉店しているお店もあった。潰れているのではなく、既にその日の営業を終わらせてしまったらしい。まあそりゃこんな状況じゃこうもなるよね。
1階にあるはずの広場もこの静寂っぷり。そのへんの商業施設なら常に誰かは座っているはずなのだが、ここにはその姿もなし。まあ万葉倶楽部に行ってればそこで休憩するだろうし、地下のフードコートに行けば机だってあるし、水だって飲み放題になることを考えると、そうなるのも無理はない。それにしても贅沢な空間の使い方だ。もうひとつくらいお店を作れそうなスペースもあるのに。なお、奥の謎の日本家屋は18Fにある「しゃぶしゃぶ木曽路」に向かうための専用エレベーターらしい。お店でもないのにずいぶん立派だな・・・。
1階ですらこの状況なのだから、その上の階に関してはもう言うまでもないだろう。空きテナントを使った謎の「持ち帰り受付エリア」なる場所が出来上がったり、
そもそも入れないフロア(エスカレーターにも乗ることができず、中が見えないようシャッターで閉められている)があったり、
巨大な空きテナントが残されていたりと、その闇は相当深いようだ。
しかしどういうわか、2階の一部のエリアに限っては異常とも言えるほどのにぎわいを見せていた。これはどういうことなのだろうか。取材班は、その状況についてしばらく張り込みを行った。そして導き出された結論が、コチラだ。
JR神戸駅と神戸ハーバーランドumieとをつなぐ通路代わりとして使われていた
プロメナ神戸は、結局その程度の存在でしかないのだ。
まとめ ハーバーランドの負け組、挽回なるか
今回は、神戸ハーバーランド内の商業施設、「プロメナ神戸」について特集した。正直な感想として、プロメナ神戸の経営は苦しいと言わざるを得ないだろう。神戸の中心地である三宮があまりに近すぎることに加え、神戸ハーバーランドumieに商業機能の大半を取られていること、競合の神戸ハーバーセンターも多くの空きフロアを持っており、新店舗の争奪戦になってしまうことなど、マイナス要因を挙げればきりがないだろう。厳しい環境下で、競合にどう立ち向かっていくか。経営陣の戦略が問われている。
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