先日の記事で、新開地と湊川とを結ぶアーケード商店街、「新開地商店街」について特集をした。
この記事内で、「新開地商店街はパチンコ屋ばかりが並んでおり、完全に男の街と化してしまっている」というコメントを行った。「東の浅草、西の新開地」と呼ばれたその面影は一体どこへ行ってしまったのか、とでも言いたくなってしまうような残念な有様だったことを今も覚えている。
そんな新開地商店街のアーケード街を抜けた先には「新開地本通り商店街」なる商店街が存在し、かつて新開地にあった多くの娯楽が今も規模は小さくなりながらも現存しているのだというのだ。今回は、そんな新開地商店街のその先にある商店街、「新開地本通り商店街」の実情をお送りしようと思う。
本来の「新開地」の残る街・新開地本通り
新開地本通り商店街は、新開地商店街と国道28号線を挟んだ南側に位置する商店街だ。神戸高速鉄道・新開地駅と直結している(商店街内に出口がある)ほか、メトロこうべという地下街を通じて神戸高速鉄道・高速神戸駅、さらにその先のJR神戸駅やハーバーランドの再開発エリアにも接続している。すいません、このエリアの地下街は広すぎて網羅しきれません(笑)
元々神戸の中心として賑わいを見せたこの新開地。しかし、三宮や元町といった町の台頭によって衰退してしまったのは有名な話だ。そんな状況下にあった新開地を改善しようとするため、「神戸市インナーシティ総合整備基本計画 ”インナー神戸” 新生プラン21」(1989年発行)において、
・新開地本通りをアメニティ豊かな明るいモールとして再整備し、快適なショッピングを楽しめる街並みを整備する。
・若者を始め多くの人々でにぎわう映像芸術プラザ、映画村、演芸場などや、芸術を志す人々のための”新開地アート・ビレッジ”の整備を促進する。
・都心に近接する新しいタイプの都市型住宅の整備を促進する。
という目標が掲げられ、実際に「神戸アートビレッジセンター」なる複合文化施設がつくられたり、街並みが再整備されたりするなどのテコ入れが行われた。
そんな再整備の行われた新開地本通り商店街だが、その実情はどうなっているのか。ここからは、新開地本通り商店街の素顔を実際の訪問記とともに見ていくこととする。
再整備の行われた「新開地本通り」、その素顔とは
そんな状況下にある新開地本通り商店街だが、現在の新開地本通り商店街はこちらの特徴的なアーケードから始まる。芸術の街・新開地らしいといえば新開地らしいが、なんだか維持管理が大変そうだな、とも感じてしまう。
この新開地本通り商店街といえど、アーケード内に関してはまだまだ男の街・新開地という面影が深く残っているようで、中に入っている店舗もパチンコ屋や居酒屋等、明らかに「?」と感じざるを得ない様相を呈している。ここを抜けた先に芸術の街がありますよ、と言われても分からないよ、うん。
しかしこのアーケードはものの数十メートルですぐに終わり、その先ではいかにもな普通の商店街が広がっている。
その先の商店街はこのような感じ。この街路には「チャップリンストリート」なる愛称がつけられており、なんでもかつてチャップリンがこの道を通ったことからこの名前が付けられているのだという。その名前にふさわしく、道路上には通常のアスファルトではなく石畳が使われており、高級感を演出しているほか、芸術の街らしい厳かな雰囲気を醸し出している。それに加え、道路上には適度なカーブがつけられており、車側からするとスピードを出せず嫌な状態となっているが、逆に歩行者側からすると安全な状態が保たれ、落ち着いて通行・横断することができる。実に神戸らしい景色だ。
そんな新開地本通り商店街沿いには、新開地再生を目的に平成8(1996)年にオープンした、映画や劇場・多目的ホール等を備えた複合文化施設「新開地アートひろば(旧神戸アートビレッジセンター)」や、
大衆演劇を専門で行う劇場「新開地劇場」、
昭和32年から場所を変え名前を変え営業を続ける映画館「シネマ神戸」などがあり、芸術の街として東京・浅草と肩を並べていたかつての新開地の栄光が今も残っているようだ。残念ながら今の浅草とは比べものにならないほど小規模なものとなってしまいましたが。
新開地本通り内にある地図も、明らかに映画を意識した構成をしており、街の特徴が如実に表れている。こんなところから歴史がわかるから本当に面白い。
細々と残るドヤ街の面影
芸術の街と呼ばれることの多いこの新開地だが、現在ではパチンコ屋に代表されるように様々な「男向け」の施設が存在しており、その面影はこの新開地本通り商店街にも残っている。平成11(1999)年にオープンした6階建ての大型競艇場外発売場「ポートピア神戸新開地」や、
かつてあった神戸ドヤ街唯一の生き残りである「三和ホテル」が今も現役で営業を続けていた。1泊1,100円からと、非常に安く泊まれるそうですよ。
新開地にある三和ホテル
いわゆる簡易宿泊所(ドヤ)である。1泊1100円からと大変リーズナブルであるが、布団が汚く衛生的にお勧めしない。高度成長期時代には多くの港湾労働者が寝起きしたという。創業当時から変わらず神戸ドヤ街の在りし日を伝える…最後の生き残りなのだ。 pic.twitter.com/pAYy6Vm18U
— ヘンリエッタ (@Henrietta_P90GG) March 3, 2020