先日、兵庫県宝塚市「逆瀬川」駅前にそびえたつ商業施設「アピアさかせがわ」をご紹介した。
<アピアさかせがわの記事はコチラ>
しかし、宝塚市内で大規模な再開発が行われたのは何も逆瀬川だけに留まらず、西日本の中心・大阪に近いというその特質を生かしてか、市内の様々なところにその面影を見ることができる。
さて、今回取材班がやってきたのは阪急今津線は「宝塚南口」駅だ。その名の通り宝塚駅のすぐ南側、川を隔てた場所に位置する駅で、先日の記事で取り上げた逆瀬川駅のすぐ北側に位置する駅にもなっている。宝塚の温泉街がにぎわっていた頃はここも宝塚の中心部のひとつとして大きく賑わっていたのだが、現在では駅前にあったかの有名な「宝塚ホテル」も閉館・解体され、以前に比べてその地位を大きく落としている印象が拭えない。
そんな宝塚南口駅前には、1974年に開業した昭和の雰囲気を色濃く残す商業施設が今も残っており、周りの街が次々と近代化していく中で、まるで取り残されてしまったかのようにその姿を令和に突入した今も伝え続けている。今回は、そんな阪急今津線・宝塚南口駅前の商業施設「サンビオラ」について、その様子・歴史について軽くではあるがご紹介しようと思う。
驚きの昭和っぷり!「サンビオラ宝塚南口」
宝塚南口サンビオラは、かつて駅前に存在した「宝塚南口市場」を再開発する形で1974年に開業した。記事を執筆している2021年時点で47年目と、かなり歴史のある建物である。現在の再開発の基礎となっている「市街地再開発法」による全国初めての市街地再開発事業となっており、その先進性から当時は非常に注目されたという。
その先進性から、開業当初は順調に売上を伸ばしていたサンビオラ宝塚南口。しかし、1986年に逆瀬川駅前の再開発事業(アピアさかせがわ)が開業後、その業績は急落。1995年には宝塚駅前の再開発事業も完成し、結果再開発ビルの運営会社そのものが破産するという憂き目に合っている。そもそも連続する3つの駅で次々に再開発を行うというのが酷な話で、典型的な「過剰な再開発」の典型例といえる。
そんなサンビオラ宝塚南口だが、現在は「サンビオラ1番館」「サンビオラ2番館」「サンビオラ5番館」の3つの建物によって構成されている。かつては3番館も存在していたが、現在は再々開発の対象となってしまい、現在は3館運営になっている。ここからは、そんなサンビオラ宝塚南口の現状について見ていくとする。
昭和感プンプン「サンビオラ1号館」
軽く説明が済んだところで、まずはサンビオラ1号館から入っていくとしよう。サンビオラ1番館の入口は阪急宝塚南口駅の駅前広場、もしくはすぐ近くを走る幹線道路沿いから入ることができる。なんだか看板とお店のガイドが既に色あせてしまっているが、さすがに古い建物だし、この辺は仕方ないか。ちなみにこのすぐ近くにある交差点は「サンビオラ前」。地元に親しまれていることがよくわかる瞬間だ。
外観について軽くレビューしたところで、さっそく中に入っていく。・・・あー、これはマズいパターンですね。地下1階と1階には高級スーパー「阪急オアシス」がフロア全体に入居しており、まだ耐えている状況なのだが、元々の地権者が入っていたと思われる2階に関しては、人通りも少なく、全体の半分程度しかテナントが埋まっていない状況で、苦しい状況がうかがえる。しかしテナント名を入れる看板のオシャレ具合よ・・・宝塚らしいといえば宝塚らしいし、昭和臭いといえば昭和臭いと感じてしまう。
中を回っていても、空きテナントばかりが目立つ状況。概要のところで述べた宝塚市内における連続再開発事業の結果、店舗が次々に撤退。結果ビルの床面積の半分以上を運営会社が持っていた時期もあったそうで、相当厳しい状況にあったことがうかがえる。
なお、サンビオラ1番館の2階には、恒久的に展示されているのかは分からないものの、「サンビオラの歴史」というコーナーが設けられており、昔の写真が何枚も展示されていた。上の写真にある「宝塚南口プラザ」は阪急宝塚南口駅に直結する高架下のショッピングセンターのことで、現在は当時とは全く違う姿になってはいるものの、今も現役で営業中である。
それ以外にも、かつて存在した(今も細々と営業しているが)宝塚温泉郷にまつわる写真や、
混雑するかつてのサンビオラの昔の姿を写した写真などが記録されていた。かつてはさぞ賑わっていたんでしょうね。残念ながら今ではこんな寂しい状況になってしまっていますが。よくある風景ではあるんだけど、それでもやはり寂しさを感じずにはいられない。
サンビオラを構成するその他の建物たち
異様に入りづらい「サンビオラ2号館」
先ほども書いたが、宝塚南口サンビオラは当初4つの建物で構成されており、それぞれ「サンビオラ1番館」「サンビオラ2番館」「サンビオラ3番館」「サンビオラ5番館」という名称がついていた。現在は「サンビオラ3番館」がなくなり、3館による運営がなされている。先ほど「サンビオラ1番館」の特集をしたので、ここからは残りの3つについて、それぞれ軽く解説を加えていくとしよう。
まずは「サンビオラ1番館」のすぐとなりに位置する「サンビオラ2番館」についてだ。右側が1番館、左側が2番館となっており、両者はそれぞれ2階にあるペデストリアンデッキでつながっている。
しかしこちらのサンビオラ2番館だが、1階はテナントなし、2階が「魚民」、3階が着物店に保育園、4階が塾となっており、某ウイルスが猛威を振るう状況下においてはいささか入りづらく、中を見ることはできなかった。魚民以外は入りづらい店ばかりだが、ぜひ一度入ってみたいと感じた取材班だった。
再再開発された「サンビオラ3号館」
続いてサンビオラ3番館だが・・・こちらは再開発が行われ、現在では「ザ・宝塚タワー」なる超高層マンションが建立されており、サンビオラ?何それ?美味しいの?とでも言いたげな様子で我々を見つめてくる。なんでもサンビオラ3番館は全国初の地方自治体による市街地再開発ビルとして建設されたビルらしく、さすがにガタが来ていたのだろうか、2012年に建て替えられてしまった。宝塚南口駅前ということ、JRと連絡する宝塚駅からも徒歩圏内(とはいっても10分以上歩くのは高層マンション住民にとっては苦痛かもしれないが)ということもあってか、比較的評価は高いようだ。
やる気なさそう・・・「サンビオラ5号館」
さて、最後にサンビオラ5番館についてだ。サンビオラ5番館は2階建ての商業施設からなる棟と比較的高層のマンションから構成されており、こちらは今も現役だ。
しかしそのテナントはというと、どちらかというとチェーン店に近い形態を持つお店が比較的多く入居しており、コチラに関しては随分と味気ない印象だ。まあ入っているだけ良いか。
そんなサンビオラ5番館だが、その端っこには「2階 喫茶・飲食 南口会館」といういかにも昭和っぽい案内が。ここには一体何があるのだろうか。
2階には「宝塚市立地域利用施設南口会館」という、宝塚市営の集会所と思われる施設が所在していた。そしてその隣には喫茶店と、
謎の扉が設置されていた。何やこれ。これが噂に聞く「飲食店」ってやつなんでしょうかね・・・。なかなか荘厳なドアなんですが、この中にはどんなお店が入っているんでしょうか。気になります。
そしてこの目の前には道路を渡り、向かいの高層マンションの前で地上に降りるという形を取っている歩道橋が設置されていた。おそらくサンビオラ3番館に連絡する通路が今も名残という形で残っているのだろう。
そんなサンビオラ3番館と5番館を結ぶ橋からは、宝塚駅から西宮北口駅方面へと向かう阪急今津線の車両が撮影できた。宝塚音楽学校や宝塚歌劇団の劇場を目の前に臨むマルーン色の阪急電車を横に、一種のもどかしさを感じずにはいられなかった・・・。
これでいいのか宝塚市、尼崎市、そして市民 74歳の壮大な夢に