急激に進んだモータリゼーション化や大型店舗の進出により、ここ20~30年ほどで日本各地の商店街が衰退し、シャッター街へと変貌してきていることを知らない者はもういないと言っても過言ではないだろう。昨今では様々な場所でシャッター街への対策が取られてきており、高松丸亀町のように大規模な再開発を行って商店街を再生させたという事例もあるにはあるものの、やはりどこもお金がないからか、「対策」とは名ばかりで実際には放置プレイ状態をかましている商店街も多いのが現状だ。
そんな課題の多いシャッター商店街問題だが、兵庫県の中心・神戸市にはシャッター商店街はおろか、もはやそのシャッターをつくるお店さえ解体され、完全に商店街でなくなってしまった「シャッター商店街」があるのをご存じだろうか。今回は、そんな「商店街としての役目を終えてしまった」商店街、「サンロードクニカ」をご紹介しよう。
振興組合の解散した商店街の今
サンロードクニカは、先日の記事で特集した「大安亭市場」の北側にある全長110mほどの比較的短い商店街だ。大安亭市場の目の前にあるJRと阪急の高架を抜け、1分ほどそのまま北側へと歩き続け、山手幹線という幹線道路を抜けた先に、この商店街は存在する。
もともと大安亭商店街とサンロードクニカのあいだには「中大安亭商店街」なる商店街が存在し、アーケードも設けられていたようだが、現在では老朽化に伴いアーケードを撤去したようで、今はマンションが建設されてしまい、商店街としての面影はほとんど残っていない。
そんなサンロードクニカだが、現在では大安亭市場のにぎわいとは打って変わり、現在では嘘のように寂れてしまっている。ここからは、そんなサンロードクニカに現存する数少ない営業中のお店をご紹介しよう。
お米屋さん!!
豆腐屋さんに米やお酒を売る酒屋さん!!
2020年に他の場所から移転してきた「アロッコ」なるピザ屋さんに散髪屋さん!!
そして極めつけに歯科医院まである!!
・・・
以上!!合計6店舗!!
いや・・・ 少ない!!少なすぎるぞ!!
一応これ以外にもIT関係の会社の事務所やNPO法人の拠点なんかがある模様で、それを含めれば12~13くらいテナントは入っているのだが、「商店街」というにはあまりにも貧弱な状況で、いったいこれは本当に商店街なのか?と首をかしげてしまうほどの悲しすぎる状況が、そこには広がっていた。
そもそも、なぜこんなことになってしまったのだろうか。以前は「上大安亭商店街」という名前で運営が行われており、今も残る「大安亭市場」やかつて存在した「中大安亭商店街」とともに大安亭商店街シリーズの一角を担っていた。当時は上大安亭商店街単独で商店街の振興組合も結成されていたようで、1995年1月の阪神淡路大震災発生前には27の会員がいたという記録も残っている。
しかし、近隣の大安亭市場などに比べてもともと店舗数が少なかったこと、商店街全体がやや山側、坂を上る途中に位置しており坂を上り下りしないと買い回りができないことなどが仇となり、時の経過とともに商店街が衰退、「サンロードクニカ」に名前を変え再起を図ったものの復活することができず今に至っている。
2008年には肝心の振興組合が解散という事態に陥り、アーケードは撤去されることになった。しかし、撤去費用を捻出することができず、令和へと元号が変わった今も放置されているようだ。電気代は現在残っているお店で払っているらしい。比較的新しめのアーケードとはいえ、かなり長い間この状態にあるようだが、もし大規模な修繕が必要になったらどうするのだろうか。それを考えると、このアーケードが持つのも時間の問題なのだろう。
事務所と住宅の連なるアーケード内・・・
これまで書いてきたように、サンロードクニカの現状は良いとはいえない。ただ、悪いかと言われると、一概にそうとも言えない部分が残る。というのも、建物が壊されて再開発されてしまったからだ。ここからは、そんなサンロードクニカが今どうなっているのか、その現状をお届けする。
先ほども書いたが、サンロードクニカはやや山側に位置しており、緩めの坂にへばりつくようにして構成されている。お店が少ないこともあってか、お客さんは少なめだ。というか、みんなここには用はないようで、素通りするだけのただの「通行人」という存在になってしまっている。いったい何がなんだかよくわからないな、おい。
そしてこれも先ほど書いたが、ここはもはや商店街としての体をなしていない。シャッター商店街として放置されたのち、そのシャッター商店街を構成するお店が壊され、再開発されてしまったからだ。そしてその現状を表すかの如く、アーケードから離れた形で建物がつくられてしまっている。商店街?何それ?といった具合だ。
とはいえ、全ての建物が解体されてしまったのかというとそんなことは決してなく、歯抜け状態になってはいるものの、商店街時代の趣を残す建物も一部現存していたりする。まあ、あったところでただのシャッターなんですが。
商店街内にある「最近できたと思われる建物」は、基本全て住宅となっている。基本的には一軒家もしくはアパートだが、近隣の二宮商店街と同じように、近年では割と大型のマンションも開業している。腐っても三宮からチャリンコで10分ほどの立地、便利なのは事実なんだけどなんだかなぁ・・・。
もはや商店街としての機能を失ってしまったサンロードクニカだが、現在では企業やNPO法人の事務所が次々に入居し始めてきており、別の意味での活気をもたらし始めてきている。もっとも、休日は誰もいないんですが。こんなところにNPO法人が陣取っているあたりはさすが福祉の街・神戸といったところなのかもしれない。
驚いたことに、こんな商店街にもマスコットキャラクターがいるというから驚きだ。ここのマスコットキャラクターは、ずばり「鬼」。葺合地区の民話「こくがのとげ抜き石」から来ているらしい。そういえば大安亭市場にも「ロダンの狸」なんてのがいたなぁ・・・。
それにしても、この看板の右下に書いてある「楽しいお買い物を」の文字、もはや商店街の体を失っているのに大丈夫なのか・・・ 商店街の終焉とは何なのか、実際に目で見て感じた取材班でした。