西宮の再開発といえば西宮北口駅周辺の再開発があまりにも有名だが、西宮北口駅から西に1駅移動した夙川駅の駅前にも実にレトロな再開発ビルがそびえ立っていることは意外に知られていない。
その夙川駅前に位置する再開発ビルが「夙川グリーンタウン」である。1977(昭和52)年開業というなかなかの経歴を持つこの再開発ビルには、開業当初から現在に至るまでダイエーが核テナントとして一貫して入居。その歴史を40年以上もの長い間伝え続ける存在となっている。今回は、そんな夙川駅前に位置する再開発ビル「夙川グリーンタウン」について、その概要と現状を見ていくこととする。
夙川駅前第一種市街地再開発「夙川グリーンタウン」
夙川グリーンタウンは、兵庫県西宮市に位置する再開発ビル。「夙川駅前第一種市街地再開発事業」により、1977(昭和52)年に開業した。
夙川グリーンタウンは、日本で初めて「再開発と区画整理を同時並行して行った」再開発ビルとして知られている。元々1960年代から事業構想があったというこの夙川駅周辺の再開発。1966(昭和41)年には当時存在した「市街地改造事業」により計画を進めようとしたこともあったようだが、資金不足や商業集積の問題により頓挫。その2年後の1968(昭和43)年に区画整理を行うことが決定し、駅前広場の整備などが行われることが決定した。
夙川駅周辺の区画整理結果。白線が旧来の道路、黒線が区画整理後の道路。中心を貫通する広い道路や、駅前広場等が整備されていることが分かる。
ところが、事業実施にあたり「換地用地が不足する」という問題が発生。この解決のために、大規模な再開発ビルを整備するという政策を取ったようである。また、この再開発には大手デベロッパーである住友不動産も関わっており(組合員の一部として参加)で、住宅面では特に深く関係を作っていたようだ。そのような経緯もあってか、夙川グリーンタウンの建設は大いに難航。権利関係者間の調整や建設に伴う地域への影響の問題から、意見の対立が新聞上を賑わすという事態もあったという。
大規模小売店舗の看板。「住友不動産」の文字が光る。
画像は西宮市公式サイトより抜粋
また、この問題は政治面にも波及。1977(昭和52)年6月の定例会では、夙川グリーンタウンに関する以下3つの請願についての審議が一同に行われるという事態も発生してしまった(結果は全て「取り下げ」)。
・夙川駅前第1種市街地再開発事業促進についての請願
・夙川のダイエー進出に対する支援要望に関する請願
・ダイエー並びに量販店の夙川再開発地区誘致に対する反対の請願
そんな様々な紆余曲折を経て完成した夙川グリーンタウン。完成から既に40年以上の時間が経過している「古株」だが、その内部はどのようになっているのだろうか。ここからは、そんな夙川グリーンタウンの内部の様子について、詳しく見ていくこととする。
さすがに古さを隠しきれない内部
夙川グリーンタウンの歴史と現在に至る経緯を見てきたところで、その内部へと入っていくとしよう。最寄りとなる阪急夙川駅とは大通りを挟んだ向かい側に位置するこの夙川グリーンタウンだが、駅とは地下道と陸橋の2か所で施設にアクセスできる状態となっており、このあたりについては非常に好感が持てる。
2023年訪問時のフロアガイドは上の通り(最新の店舗一覧は公式サイトを参照のこと)。商業エリアはB1F～3Fの4層構造。核店舗としてイオン系列の「ダイエーグルメシティ」がB1F～2Fの3フロアに入居しており(開業時から現在に至るまで入居中)、3Fには同じく核店舗としてこれまたイオン系列の「キャンドゥ」が出店。組合施行型再開発の割になかなかイオン色の濃い施設となっている（笑）
中の様子を見ていこう。ちょこちょことリニューアルは施されているものの、さすがに開業からかなり時間が経過していることもあってか古さが目立っている。このあたりは仕方ないか。
館内にはいかにも昭和らしい照明によるオブジェや、
謎の壁画、
あまりにも渋い「味の街 グリーンタウン」なる看板まで設置されていた。夙川駅のある阪急神戸線周辺は全体的におハイソなエリアが多いことで有名なのだが、まさかこんな場所が残っていたとは・・・驚きでしかない。
