中国武漢発のウイルスにより世界中が疲弊している中、みなさんはいかがお過ごしだろうか。最近はピーク時に比べるとある程度落ち着いてきており、様々な経済活動も再開し始めてきているようだが、それでもやはり海外旅行には全く行けないなど、いろいろな面で規制がかかっているのも事実だ。
そして、映画館もその例外ではない。密室の中で一つの映画を見る、そんな状態下で営業を続けなくてはならない映画館の懐事情がいかに苦しいかは、もう言うまでもないだろう。
しかし、そんな苦しい映画館を救うと言われているある作品が、昨今話題を呼んでいる。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」である。
そんな話題の映画、シン・エヴァンゲリオン劇場版だが、この映画内にある地名が書かれていたこと、そして上のビラに使われている場所が実際に存在したことから、「聖地」として話題になっている場所が山口県に存在する。宇部新川駅である。そんな宇部新川駅が、現在いろいろとマズい状況になっているという情報を取材班は耳にし、今回ここに来た次第である。今回は、そんな宇部新川駅周辺がどうなっているのか、写真とともに解説していくとする。
シン・エヴァの聖地、宇部
先ほども挙げたように、宇部新川がシン・エヴァンゲリオンの聖地であること、これは紛れもない事実だ。
では、なぜ宇部が取り上げられたのか。それは、この映画の監督である庵野英明氏が宇部市出身であるからだ。これには納得できる人も多くいるだろう。実際、宇部市観光協会のサイト「宇部市観光ガイド」を見て見ると、「観光モデルコース」の一つに「エヴァンゲリオン聖地巡りコース」などというものが記載されており(現在は削除)、このことは公式にも認知されているようだ。
それでは、なぜ「宇部新川」という駅が使用されたのか。実際、「宇部駅」という名前の駅は別にあるし、山陽本線の通る宇部駅とは異なり、宇部新川駅へのアクセスはすこぶる悪い(宇部駅からは10分、新幹線と連絡する新山口駅からは所要1時間、しかも本数はわずかに1時間に1本程度)のにも関わらず、なぜこんな場所が選ばれたのだろうか。
その理由としては、もともと宇部市の中心が宇部新川にあることが挙げられる。現在では「宇部新川」などという名前になってはいるものの、もともと宇部駅は「西宇部」を、宇部新川駅が「宇部」を名乗っていたこと、現在でも宇部駅には「宇部市の中心部は宇部新川駅です」との旨が書かれた看板を見ることができることからも、その裏付けがされている。
そんな宇部新川駅だが、実際訪問してみると、エンディングでマリとシンジが座っていたベンチや2人が駆け上がっていた階段など、至るところでエヴァンゲリオン劇場版で出てきた多数のモニュメントを見ることができる。それもあってか、実際取材班が訪問した際も何人かファンと思われる人が写真撮影・動画撮影を行っているのを見ることができた。とはいえ、こんな状況であるからか、その数は数人と、そこそこのヒットを誇る映画とは思えないほど少なかった。
先ほどあげたビラと同じ場所も実在していた。こちらは「島通踏切」という名称がついており、駅から歩いて2~3分、かなり近いところにある。ただし、踏切とポイントとの間にはかなりの距離があること、駅前ということもあり車通りがかなり多いこともあってか、写真撮影はやや難しい(この写真も6倍ズームで撮影しています)。だからといって線路上へ侵入するのはもちろんご法度なので要注意だが。
そんな宇部新川駅へのアクセスだが、実のところあまり良くないと言わざるを得ない。宇部新川駅へのアクセスについては、鉄道を使う場合は山陽本線と接続するJR宇部駅から1両編成もしくは2両編成の列車に揺られること約10分、新幹線と接続する新山口駅からはなんと約1時間、しかも列車本数も1時間に1本程度とかなり苦しい。また、車で来る場合も宇部ICから約20分ほど道路を走らなければならず、なかなか行きづらい場所になるのは紛れもない事実だ。宇部自体はそこそこ発展した場所(人口県内3位)なのだが、やはり地方は地方なのだ。車社会になった地方の苦しい状況が垣間見える瞬間だった・・・。
ブルーカラーの集まる街の今
そんな宇部新川の今だが、もともとブルーカラーの街ということもあり(宇部興産を中心に、重化学工業が発展しているのが特徴)、コロナ禍による影響は他と比べても少なめだといえる。
とはいえ、やはり苦しいことには変わりないようで、駅からみどりの窓口が撤退するなど、予断を許さない状況が続いている。もっとも、これはJR西日本の問題かもしれないが。
そしてその宇部新川駅前だが、多数のヤシの木が植えられるなど、まるで南国の観光地を思わせるかのような美しい風景が目の前に広がっている。しかし、ここはあくまで中国地方の工業都市。列車があまりに不便になってしまったこと、車社会へと変わってしまったこと、そして郊外の幹線道路沿いに多くのロードサイド店舗が出店してしまったことにより、駅前は衰退傾向にあるようだ(ただし、店の大型化が進んだことにより、商業施設売り場面積そのものは増加傾向にある)。車だと運転代行でも使わないとどうしようもないし、このへんは仕方がないのだろう。
そんないろいろと問題を抱えている宇部新川駅前だが、駅を出て左側、駐輪場を超えるといきなり昭和の雰囲気を色濃く残す看板が現れる。この「松島町商店街」は1961年に形成された商店街で、現在もその雰囲気を色濃く残しているようだ。
そんな商店街だが、お世辞にも流行っているとは言いがたいのが現状だ。建物こそあれど、店営業せず、といったところか。2~3階建ての小規模ビルも見かけたが、1階こそ営業しているものの、上層階に至っては壊滅的な状況だ。
そんな商店街には、なぜか飛行機会社・スターフライヤーの搭乗音楽が流れていた。確かにスターフライヤーはこの近隣にある山口宇部空港から羽田空港まで飛行機を飛ばしているが、それとこれとに何の関係があるのか、いったい全体よくわからない。中心部の衰退とはこういうことなのか・・・そう感じざるを得ない光景だ。
商店街を抜け、駅のすぐ近くを通る大通りに出てきた。こちらはまだお店もいくつか残っているものの、このコロナ禍ということもあってか、休業中のお店も多くあるのが現状だ。ブルーカラーの街ということもあり、居酒屋が多く立ち並ぶのがこのエリアの大きな特徴だが、やはり大人数の宴会が自粛されていることもあってか、どのお店も苦しい状況が続いているのかもしれない。なお、「シンエヴァのエンディングで、シンジとマリはラブホテルに行った」と書くサイトもあったが、取材班が確認する限り、該当するホテルである(と言われている)
ABホテル宇部新川はラブホテルではないのでご安心願いたい。
(撮影した写真に適切なものがなかったため、Google Mapで代用します。申し訳ございません。)
一応宇部市の中心街である「宇部中央銀天街」にも来てみたが、やはりというかなんともいえない状況にある。地名まで「中央町」などという大それたものになっているが、その実状はやはり苦しい。かつてはショッピングセンターが核テナントとして入っていたようだが、現在はそれも撤退し、残る商店街内には中小規模の商店や飲食店、カフェといったお世辞にも集客力のあるとはいえないテナントばかり。そりゃ苦しいって。商店街内には大規模なステージまで残っているようだが、これもどこまで耐えられるか。真価が問われるときだ。
(画像はWikipediaより引用)
しかし、中央町三丁目のエリア(アーケード西側)に関しては再開発が進んだようで、上の写真のようないかにも再開発された雰囲気が残っている。とはいえ、アーケードが無くなっていたりせいぜい2~3階建ての建物しか建たないあたり、ここも限界が近づいてきているのだろう。再開発の結果まるで商店街全体がショッピングセンターであるかのようにキレイになり、人出も増えて大きな飛躍を遂げた高松とは大違いだ。
そんな宇部新川だが、その現状を表す適切な写真があったので、最後に紹介しておこうと思う。
噴水すら使えないあたり、苦しい状況がよくわかってしまう宇部の現状でした・・・